不安社会~安心・安全を求めて
過去に例のない事件、動機が理解できない凶悪犯罪が相次ぐ現代は、体感不安が拡大している。安心・安全という言葉が強調され、世の中を覆う不安はどうも尽きない。そんな「不安社会」の実像を見つめ、東北大大学院文学研究科の吉原直樹教授(社会学)の関連する研究成果も織り交ぜながら、人々の営みを豊かにする安心・安全の在りようを考えたい。(「不安社会」取材班)
東北みらいプロジェクト
雇用システムのゆがみに警鐘を鳴らそうと、2年前に発足した東京のNPO法人「POSSE」の活動が、派遣労働者や期間従業員の大量解雇が相次ぐ中で、緊迫感を帯びてきた。活動の柱の一つである提言誌発行は、日々深刻さを増す懸案事項にリアルタイムで切り込む。代表の今野晴貴さん(24)=仙台市出身、一橋大大学院生=は「今こそ社会の在りようが問われている」と強調する。
今月22日夜、東京・世田谷のPOSSE事務所に、20代から40代のメンバー十数人が集まった。POSSEには政策研究など6つの班があり、この日は労働相談班のミーティングの日だった。
まず「女性労働」をテーマに学習会を行い、戦後日本の雇用形態のゆがみを、女性を取り巻く労働環境の変遷から考えた。より効果の上がる労働相談の展開手法についても話し合った。
ミーティングの直前に行われていたのは、9月に創刊した労働問題総合誌「POSSE」の第2号の発送作業。表紙には「『蟹工船』ブームの先へ」の見出しが映える。現代の新貧困層の苦悩と重なるなどとして今年注目を集めた、小林多喜二の「蟹工船」に絡めて組んだ特集記事だ。
POSSEは、非正規雇用拡大の影響をまともに受けている若い世代を中心に、約170人の会員で構成する。雇用のゆがみが社会に大きな不安をもたらすのでは―との問題意識をベースに、街頭での実態・意識調査などを続けてきた。
代表の今野さんは「雇用状況は何年もかけて厳しさを増してきていた。それでも今年前半まではまだ穏やかな方だった。しかしここ数カ月の間に、景気の冷え込みが急速に進み、雇用を取り巻く環境は、さまざまな虚構がすべて崩れ落ちた感じだ」と表情を曇らせる。
そうした切迫感もあって、「POSSE」第2号の編集作業は、締め切りのぎりぎりまで原稿の差し替えを繰り返した。
今野さんが書くことになっていた巻頭の原稿は、当初は「派遣法改正に寄せて」というテーマの予定だった。しかし締め切り1週間前に「金融危機と派遣切り―派遣政策の抜本的転換を」に変更。別のメンバーによる「内定取り消しで泣かない方法」と題する原稿も最終段階で新たに加えた。
市民向けの啓発の場も、頻繁に開いている。21日は都内で「しごとのトラブル、解決しよう~メモする習慣があなたを救う」と銘打ったイベントを行った。
「派遣切り」「内定取り消し」「過労死、長時間労働」の3テーマについてワークショップを実施。これらの問題に遭遇してしまった場合でも、日ごろの勤務実態を詳細に記録しておくことで、企業側の不当な対応を回避し得ることなどを、参加者に呼び掛けた。
今野さんは「改善につなげる具体策を提案し、悲惨な状況に『挑む』活動を展開していきたい」と話している。 (「不安社会」取材班=松田博英)
【写真】労働相談班のミーティングで意見交換をする「POSSE」のメンバー。左から3人目が代表の今野さん=22日、東京都世田谷区の事務所
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