ブログ「余震の中で新聞を作る」から5冊目の本ができました

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 2011年3月11日の東日本大震災、東京電力福島第1原発事故が起きてから5年余り。その間、河北新報編集委員としての被災地取材の詳報を記録してきた私のブログ『余震の中で新聞を作る』から、5冊目の本が刊行されました。
 『東日本大震災 何も終わらない福島の5年 飯舘・南相馬から』(明石書店/350ページ、2200円)です。

 『政治の側が大震災、原発事故に幕引きするかのように振りまく「復興」の明るい響きが現実を覆い隠そうとし、逆に被災地には厳しい正念場が背なる中で、同胞たちはどのような選択をし、生きなおそうとしているのか?古里の未来はどうなろうとしているのか? そんな新たな現実を記録しなければなりません。』

. まえがきの末尾に、こう書きました。これまで4冊の本では、岩手から福島まで南北の被災地を俯瞰していただけるように、その現実と復興を模索する人々の声を同時進行の形で記していました。が、今回の新刊ではタイトルの通り、原発事故を背負わされた私の郷里、福島県相馬地方の同胞たちの5年を記録しました。

 避難指示解除が来年3月末に迫る飯舘村の難題山積の現状と「帰るのか、帰れぬのか?」に選択に苦悩する住民たち、いまなお復興を阻む厳しい「風評」からの再生を試行錯誤する南相馬の農家たちの闘いを中心に、取材の縁を重ねていた人々の5年を通して見える、その歳月の意味、原発事故が喪失させたもの、不可逆の現実から始めるほかない「生き直し」の多難さ―。「復興五輪」を掲げた政府の幕引きの動きとは裏腹に、除染後の砂漠のような農地と汚染土袋の黒山の風景が、置き去りにされる被災地の姿を光と影のように一層あらわにしているからです。

 『東日本大震災 何も終わらない福島の5年 飯舘・南相馬から』は、①帰れるか、帰れぬのか―比曽から問う ②生きる、飯舘に戻る日まで(雑誌『婦人之友』2015年1~12月号連載に加筆) ③オオカミ絵、よみがえる ④南相馬 苦き風評からの再起―の4章とエピローグ「沖縄で響いた被災地からの訴え」、そして、2本のコラム「風化と風評をどう乗りこえるか」(『ジャーナリズム』15年12月号メディアリポートに加筆)、「被災地で聞かれぬ言葉、当事者の言葉」(復興学会誌『復興』16年3月号への寄稿に加筆)を収録しました。

 明るい表紙の笑顔の女性は2章の主人公、佐野ハツノさん。避難中に発病したがんと闘いながら、「までい着」作りなどで仮設の仲間を励まし、帰村の春を待つ人です。原発事故による「古里喪失」を一時は覚悟し、津波で変わり果てた懐かしい浜々の景色に心をぼろぼろにされながら、記録し伝える仕事を続ける励みと希望をくれたのが、本書に登場する同胞たちの苦境の中の笑顔、困難な未来へも再起する勇気、かつて天明の飢饉を生き抜いた先人から受け継ぐ不屈の魂でした。それらの思いを託されたメッセージを、どうぞ、受け取っていただけましたら幸いです。

 158回まで連載してきましたブログ『余震の中で新聞を作る』は、9月から再開いたします。

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