シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

3.日欧の距離

2008/09/01

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 今年は意外なところに日本が顔を出しています。コンペ作品に登場したバルベ・シュロデール監督の「陰獣」は、文字通り江戸川乱歩の「陰獣」の映画化。といっても、主人公はフランス人小説家アレックス・ファイヤール(ブノワ・マジメル)。謎の猟奇作家大江春泥に心酔する彼は、京都の祇園で春泥と関係のあった芸妓と出会い、春泥の正体をつきとめようとする、という風に脚色されています。

 ハリウッド製「さゆり」に登場する祇園はすべてアメリカに作られたセット、舞妓や芸妓も中国人やアジア系アメリカ人でしたが、シュロデール監督は、すべて日本でロケし、芸妓を演じる源利華に井上流の舞を習わせるなど、本物であることにこだわったようです。ただし、出来上がった映画は、乱歩特有の、じめじめとした陰鬱な世界とはかけ離れていて、ロケにこだわったわりに、いつもの"ジャポネスク"な画面も散見、日本とヨーロッパの遠さを思い知りました。

 もう1本はウディネ映画祭と共同で招待作品として特別上映された河崎実監督の「ギララの逆襲、洞爺湖サミット危機一髪」です。これは中国が放ったミサイルのエネルギーで復活したギララが北海道を襲い、洞爺湖サミットのG8の各国首脳たちが怪獣退治に立ち上がるが、すべての作戦が失敗。結局、伝説の守り神"タケ魔人"を村人たちが呼び出して退治してもらう、という怪獣映画のパロディ。各国の首脳がそれぞれのお国ぶりを発揮するギャグには、会場のあちこちから笑い声が起き、翌日の日刊紙「チャック」には、映画の中でソルコジ大統領が同時通訳の女性を口説くときの迷台詞「君は凱旋門、僕はエッフェル塔」が引用されるほど、ヨーロッパのおたくに大受けでした。

(齋藤敦子)

写真:「陰獣」の記者会見 左から主演のブノワ・マジメル、バルベ・シュロデール監督、源利華、石橋凌