シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)コンペ部門に15作品

2008/10/23

1024.jpg  映画祭の華は、赤絨毯ならぬ緑絨毯を歩くスターたち、ではなくて、コンペティションだと私は思う。最終日、授賞式の壇上で栄誉を受ける受賞者が映画祭最大のスターであるし、その年の顔となる。ここにどんな顔が並ぶかで映画祭の価値が決まるといっても過言ではない。ナント三大陸映画祭のような地方都市の小さな映画祭が名声を得たのは、世界に先駆けて侯孝賢や蔡明亮、賈樟柯といった監督を発掘し、賞を与えてきたからであって、赤絨毯を歩いたスターが多かったからではないのだ。けれども、映画が娯楽の王様だった時代が終わり、世界の"グローバル化"や技術の著しい変化で、映画界が非常に流動的な状況になっている今、どの映画祭もコンペ部門の充実が一番頭の痛い問題になっている。

 今年の東京映画祭の顔、コンペ部門には世界各国から15作品が並んだ。そのうち、ワールド・プレミア作品は4本(うち2本が日本映画)。イエジー・スコリモフスキの「アンナと過ごした4日間」はカンヌの<監督週間>で、とセルゲイ・ドヴォルツェヴォイの「トルパンヴェネチアの<批評家週間>で紹介され、「トルパン」はある視点賞、グレゴリオは新人賞を受賞し、いわば国際的なお墨付きを持った作品。東京らしさを出すのは、それ以外の、特にプレミア作品ということになるだろう。

  日本映画以外のワールド・プレミア作品2本はいずれも中国映画だ。香港の脚本家アイヴィー・ホーの監督デビュー作「親密」と、フォン・シャオニンの「超強台風」である。「親密」は職場の上司で家庭のあるイーキン・チェンを好きになってしまったカリーナ・ラムの淡い恋心を、時間を遡りながら描いていく。ラムの恋心の淡さが脚本に伝染したのか、映画自体の輪郭が淡くなりすぎてしまったのが惜しまれる。

 「超強台風」は、巨大な台風に襲われた中国・温州の市長の活躍を描いたスペクタクル映画。気象学者の提案で台風の目の無風状態を利用して緊急救助を行うところは「252」、山肌にぶつかった台風が竜巻を起こすところは「ツイスター」、高波で壊れた壁から避難所にサメが飛び込んできて「ジョーズ」になるなど見所満載。円谷プロを彷彿とさせるミニチュアを使った、昭和の香りのする特撮など、"とんでも"系の抱腹絶倒なエンターテイメント映画ではあるのだが、なぜこれが映画祭のコンペ作品なのかがよくわからないのだ。知り合いの中国人記者は、監督が政府の受けがいい人だからだろう、と言っていたが、さて。 

 写真はコンペ部門に出品された「トルパン」の記者会見の模様。「トルパン」は、今年のカンヌ映画祭で黒沢清の「トウキョウソナタ」やスティーヴ・マクィーンの「ハンガー」といった強敵を抑えて、ある視点賞を受賞した作品。

(斎藤敦子)