シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(7)東京舞台に 浮遊する魂の視点 不思議な感覚

2009/05/24

 受賞式を目前に控え、東京を舞台にした2本の作品があいついで上映されました。フランスのガスパール・ノエ監督の『エンター・ザ・ヴォイド』とスペインのイサベル・コイシェ監督の『東京の音の地図』です。
Cannes2009-Day11-120.jpg 『カルネ』や『アレックス』などの問題作で知られるノエの『エンター・ザ・ヴォイド(虚空に入る)』は、東京で一緒に暮らし始めた兄と妹が主人公。街の生活に慣れ、麻薬を都合し合う悪い友達もできたところで、警察の手入れに遭い、兄は撃たれて死んでしまうのですが、幼いときに交通事故で両親を失い、離れ離れに育った兄妹は二度と離れないと誓いを交わしていて、兄の魂は空中を浮遊しながら妹を見守り続け、やがて復活のときを迎える、というもの。独特の映像表現で知られるノエですが、今回も最初から最後まで兄の一人称で撮影していて、浮遊する魂の視点で"下界"を眺めていると不思議なトリップ感覚に陥ってしまいました。
 『東京の音の地図』は、録音技師の男(田中泯)を狂言回しに、朝は魚河岸で働き、昼はプロの殺し屋という二重生活をおくる女(菊地凛子)が、殺すはずの標的であるワイン商のスペイン人(セルジ・ロペス)を愛してしまうという物語。出口のない、男と女の刹那的な恋愛を、築地、ウォーターフロント、寿司屋、ラーメン屋、浅草の花やしき、下北沢、ラブホテルといった"東京名所"を背景にして描いた、無国籍でキッチュな作品でした。

 写真は、記者会見のときのセルジ・ロペス、イサベル・コイシェ監督、菊地凛子の各氏。菊地さんは3年前の『バベル』に続いて、2度目のカンヌ登場です。
(齋藤敦子)