シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(1)イタリア人により近く

2009/09/03

008.jpg 第66回ヴェネチア国際映画祭が9月2日の夜から開幕しました。

 今年のオープニング作品に選ばれたのは、イタリア映画としては20年ぶりという、ジュゼッペ・トルナトーレの『バーリア』。シチリア島の小さな町を舞台に、1910年代から現代まで、3代に渡る貧しい家族の物語を描いた壮大な叙事詩です。各時代を再現するために、準備に9カ月、セットの建築に1年、撮影に10カ月をかけたそうで、乳搾りから共産党の活動家になる主人公のペッピーノにはほとんど無名の新人俳優を使いながら、ミケーレ・プラチドやアンヘラ・モリーナ、ルイジ・ロ・カーシオなどのスターが脇を固めた、まさにイタリア映画祭が総力をかけた壮大な歴史絵巻でした。

 昨年のこのレポートでお伝えした、ディレクターのマルコ・ミュラーのインタビューにある通り、今年から、いよいよ新しい映画宮殿の建設が始まりました(完成予定は2012年)。場所は映画祭の主会場の南東側で、昨年まではカフェのスタンドや切符売り場、金返せコーナーなどがおかれていた、緑の木陰のある憩いの場所でした。その木を切り倒し、周囲を塀で囲んで工事を行っているのですから、全体的に雑然とした雰囲気になっています。また、ここが通り抜けられなくなって、カジノの地階を入り口にしたのと、カジノ前の広場に新しい上映会場ペルラ2を作ったため、会場の配置が全面的に変わり、どこからどこへ行けばいいのか、まだうろうろしているような状態です。

014.jpg では作品的にはどうでしょうか。今年はオープニングがイタリア映画だったように、新たに<コントロカンポ・イタリアーノ>というイタリアの若手作品を集めたセクションが設けられて、ヴェネチアがぐっとイタリア寄りになった感があります。コンペ部門で目をひくのはアメリカ映画の多さ。なんと5本で(ウェルナー・ヘルツォークがアメリカで撮った『悪い刑事』をアメリカ映画に数えると6本)、各国のトップ。しかもジョージ・ロメロ、トッド・ソロンズ、マイケル・ムーアといった一癖ある顔ぶれが並んでいます。また、ジョン・ラセターが名誉金獅子賞に選ばれたため、ピクサー作品の特集も組まれています。

 日本映画は、コンペに塚本晋也監督の『TETSUO THE BULLET MAN』、コンペ外特別招待作品として、りんたろう監督のアニメ『よなよなペンギン』が上映されます。宮崎駿、北野武、押井守というビッグネームが揃った昨年に比べると、ちょっと寂しいですが、6日には生誕百年を迎える黒澤明にヴェネチアがオマージュを捧げたシンポジウムも開かれることになっています。

写真上:カジノ(奥の四角い建物)の前をぐるりと塀で囲んで、新映画宮殿の建設中
写真下:主会場のパラッツォ・デル・チネマ(映画宮殿)前

(齋藤敦子)