シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)<映画の未来>を考える 二部構成でシンポジウム

2009/11/23

Filmex091123-005.jpg 林ディレクターがインタビューでも語っていたように、開会式前日の21日、神田駿河台の明治大学アカデミーホールで、北野武監督から創作の秘密を聞くマスター・クラスと、黒沢清、是枝裕和監督をパネリストにしたセッションと、両監督に加えて俳優の寺島進、西島秀俊両氏を加えたセッションで<映画の未来>を考える第10回記念シンポジウムが開かれました。

 第一部、マスター・クラスの聞き手は映画評論家の山根貞男さんで、これまで何度もインタビューしてきた経験をふまえて、公には、なかなか語られることのなかった映画監督としての北野武の考え方をあぶりだした、興味深い内容になっていました。特に、『あの夏、いちばん静かな海』は、"耳の聞こえない人は健常者とは視覚が異なり、汚い海でも美しく見えるはずだ"と思ったのが創作のきっかけだったとか、"自分でやりたいようにやれ、いい作品になったと思えるのは『ソナチネ』"などの発言には驚いたり、納得したりしました。なかでも、"『風雲たけし城』でも何でも、テレビは自分のやりたいようにやれたが、映画は妥協の産物"という発言には、オフィス北野の森昌行社長も"逆だと思っていた"と驚いていました。もちろん、言葉通りではなく、タダで見られるテレビの視聴者と金を払って見る映画の観客の差を踏まえた北野監督らしい発言ととるべきで、さすが舞台でナマの観客を相手にしてきた一流のエンターテイナーだと思いました。

Filmex091123-028.jpg 第二部の<映画の未来へ>と題したシンポジウムでは、この10年で映画製作のみならず興行の形態も動かそうとしているデジタルや、これからの映画界を担う新人監督達などの問題が語られました。ノルウェーの映画祭で全作品が上映された是枝監督が、フィルムで撮った昔の作品をデジタルで上映した際に、フィルム上映よりクリアに見えたという体験を語ったり、東京芸術大学で教鞭をとっている黒沢監督からは、今はデジタルカメラが身近にあるので、学生がすでに作品を製作した監督でもある時代だが、この10年で映画の現場は厳しい状況になってきて、新人監督としてデビューしにくくなっているなど、興味深い話が聞けました。ただ、寺島、西島両氏が加わった後半は、主催者側からの説明や問題提起などで大半の時間がとられて、肝心のパネラーからの発言がほとんど聞けず、<映画の未来>が見えてこなかったのは残念でした。林ディレクター自身も"スケジュールを合わせるだけでも大変なゲスト"だと言っていたのですから、ここはマスター・クラスのように第三者の進行役を立てた方がよかったのではないかと思います。

写真上は、マスター・クラスの模様で、右から司会の山根貞男さん、北野武監督、森昌行プロデューサーです。

写真下は、第二部のセッションの模様で、右から是枝裕和、寺島進、西島秀俊、黒沢清の各氏です。

(齋藤敦子)