シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)会見ボイコット騒ぎも

2010/05/15

20100515_01.jpg 今年の映画祭は、開催前から様々な"騒動"がありました。まず、4月のラインナップを発表する記者会見で、映画祭を中継するテレビ局に画像使用の優先権を与えたため、その他のプレス各社が記者会見の取材をボイコットするという事件があったこと。そして、発表されたコンペティション作品が16本と例外的に少なかったこと。作品については、のちに2本が追加され、映画祭直前にケン・ローチの新作が選ばれ、結局、全部で19本になりましたが、最近の映画祭では最も少ないエントリー数です。そして最後の騒動が、選ばれた作品に対して内外から大きな批判が起こっていること、です。

 もちろん、批判が起こることは今年に限ったことではありません。記憶に新しいのは、2004年にマイケル・ムーアの『華氏911』を巡って起こった大騒動ですし、去年のヴェネチア映画祭の直前にも、ベルルスコーニ政権の情報操作を批判した『ビデオクラシー』の予告篇が放送禁止になったことは、この欄でもお伝えしました。

 

20100515_02.jpg 今年、"騒動"の目となった作品は3本。1本目は、コンペ外招待作品サビーナ・グッザンティの『ドラキラ、揺れるイタリア』。昨年4月にイタリアのアキラで起こった大地震のその後の対応を巡って、政府を批判したドキュメンタリーで、イタリアの文化相サンドロ・ボンディからカンヌでの上映に反対する声があがりました。2本目は、ニキータ・ミハルコフの『太陽に灼かれて2』。ミハルコフこそロシアを"独裁国家"にした元凶のプーチンの側近、というわけで、アレクセイ・ゲルマンやアレクサンドル・ソクーロフといった映画作家から一斉にブーイングが起こりました。3本目は、ラシッド・ブシャレブの『アウトロー』。この作品は2006年に集団男優賞を獲ったブシャレブの『デイズ・オブ・グローリー』の続編で、アルジェリアの独立をテーマにし、今もまだ傷跡が深い1945年の虐殺事件を扱っているため、右派の代議士から"反フランス"という抗議の声があがり、フランス国内で大きな議論になりました。21日の正式上映の際には右派から何らかの抗議行動があるのではないかとも言われています。

 さて、今年のある視点のオープニングを飾ったのは、映画界の最長老、101歳のマノエル・デ・オリヴェイラ監督の新作『不思議なアンジェリカ事件』でした。ある夜、孤独なユダヤ人の写真家の下に使いが訪れ、婚礼直後に亡くなった娘の写真に撮るように頼まれます。写真家は、富裕な家に招かれ、娘の死顔を写真に撮るのですが、次第に美しい死顔に魅入られてしまう、というストーリー。若い者に負けないどころか、どんな若い作家よりも若々しい創造力を持ったオリヴェイラの新しい傑作でした。

 写真上は、記者会見の模様で、右から監督の孫で、主演のリカルド・トレパ、マノエル・デ・オリヴェイラ監督、美しい死体を演じたピラール・ロペス・デ・アヤラ、奥でカメラを構えているのが記者会見の司会を務めた映画評論家のジャン=ミッシェル・フロドンです。写真下は、マーケットの日本のブースの模様。大手以外の独立系の配給会社の商談はここで行われます。

(齋藤敦子)