シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)不満残る「ウォール街」続編

2010/05/18

 映画祭3日目の14日、オリヴァー・ストーンの『ウォール街:マネーは眠らない』がコンペ外招待作品として上映されました。
 この作品は1987年の『ウォール街』の続編で、2001年にインサイダー取引で服役していたゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が8年ぶりに出所してくるところから始まり、2008年に若い理想家肌のトレーダー、ジェイク(シャイア・ラブーフ)が自分に興味を持って近づいてきたのを利用して、絶縁状態の娘ウィニー(ケイリー・マリガン)との関係を"修復"しようとするが...、というストーリー。
 前編から四半世紀近い年月が経ち、情報化社会の中で、株式の世界も大きく様変わりしたはずで、オリヴァー・ストーンが今の証券業界をどのように描こうとしているのか興味があったのですが、2008年を舞台にしながら、同年1月に起こったアメリカのサブプライムローンを震源とする世界金融恐慌の話にはまったく触れられていませんでした。

 翌15日、私の不満は、チャールズ・ファーガソンの『インサイド・ジョブ』というドキュメンタリーを見て、すっかり解消しました。コンペ外特別招待として上映されたこの作品は、2008年の金融恐慌がどうやって準備され、発された警告がどうして何度も無視され、多くの人々の家や仕事を奪うことになったかを、ジョージ・ソロスのような投資家から、ウォール街に多くの顧客を持つ娼婦の元締めにまでにインタビューして明らかにしたもの。"チェンジ"を掲げた今のオバマ政権さえ、2008年の"主犯達"を金融政策の中枢に据えた"ウォール街政権"である以上、事態は何も変わらない、とファーガソンは主張しています。

 『マネーは眠らない』の中で、ゴードン・ゲッコーは服役中に書いた<強欲は善か?>という本を上梓するのですが、金融恐慌の主犯達は、世界中の人々に影響を与えながら、ゲッコーのように刑務所に入ることもなく、誰一人損もせず、むしろボーナスを貰って、今も何事もなかったように金儲けを続けています。会社の付けで娼婦を買い、麻薬を吸い、独裁者や犯罪組織のマネーロンダリングを手伝い、破綻寸前の商品を素知らぬ顔で小口投資家に売りつけるウォール街のトレーダー達。金儲けをまだ善悪という倫理の基準で考えているゲッコー氏が、いかにも古い人間のように思えてきました。


20100518_01jpg.jpg写真は、16日にある視点で上映されたジャ・ジャンクー監督の『海上伝奇』で、壇上で挨拶する監督と主演のチャオタオさん。右端が映画祭のディレクター、ティエリー・フレモーです。『海上伝奇』は上海にゆかりを持つ人々へのインタビューに、映画のクリップやユー・リクァイ撮影による今の中国の風景の映像をモンタージュした詩情あふれるドキュメンタリーでした

(齋藤敦子)