シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(6)戦争を食い物にする者達への怒り

2010/05/21

 映画祭も終わりが見えてきた20日木曜日に、奇しくも同じイラン戦争を扱った2本のコンペ作品が上映されました。1本は、映画祭直前にコンペ部門最後の作品に滑り込みでエントリーしたケン・ローチの『ルート・アイリッシュ』、もう1本はコンペで唯一のアメリカ映画、ダグ・リーマンの『フェア・ゲーム』です。

 ケン・ローチの『ルート・アイリッシュ』は、兄弟同然に育った親友がイラクの"ルート・アイリッシュ"で死んだと知った男が、親友の死の真相を突き止め、復讐を果たすというもの。"ルート・アイリッシュ"とはバグダッドの空港と、"グリーン・ゾーン"と呼ばれる中立地帯を結ぶ、世界で一番危険と言われる道路のことです。
 ケン・ローチは去年も『エリックを探して』を出品しているので、2年続けてのコンペ登場。ただ、ユーモラスで暖かかった『エリック』と違い、『ルート・アイリッシュ』は暗くて重く、特にラストの非情さには、戦争を食い物にする者達に対するローチの怒りが込められているように感じました。

 もう一方の『フェア・ゲーム』は、2003年にニューヨーク・タイムズ紙に載った、イラク国内に大量破壊兵器はなかったことを告発する記事を巡って、記事を書いた元ガボン大使ジョセフ・ウィルソンへの報復として、彼の妻ヴァレリー・プレイムがCIAのエージェントであるという極秘情報がブッシュ政府高官から故意に流された、いわゆる"プレイム事件"の映画化です。

 発端は、プレイム(ナオミ・ワッツ)率いるCIAのチームと、CIAの要請でニジェールの鉱山からイラクにウラニウムが輸出されたかどうかを調査したジョセフ・ウィルソン(ショーン・ペン)が、イラクが核兵器を開発した事実はないことを突き止めたこと。
 しかし、イラクと戦争を起こしたいアメリカ政府によって、それらの調査結果が隠されてしまうのです。映画は、ウィルソン夫妻がなぜ真実を告発し、どんな報復を受け、それでもなお政府との闘いをやめなかったのかを描いてます。


20100521_06.jpg写真は『フェア・ゲーム』の記者会見の模様で、右から監督のダグ・リーマン、ナオミ・ワッツ、プロデューサーのジェリー・ザッカーです。一昨年の審査員長だったショーン・ペンは、あいにく昨年パパラッチと起こした事件の裁判のため、カンヌに来られませんでした。

(齋藤敦子)