シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(8)ある視点賞にホン・サンス監督の「ハハハ」

2010/05/23

20100524.jpg 授賞式を明日に控えた22日、その他の部門の賞が次々に発表になりました。

 ある視点部門では、フランスの映画監督クレール・ドゥニを長とする5人の審査員が、最高賞にあたる、ある視点賞を韓国のホン・サンス監督『ハハハ』に、審査員賞をペルーのダニエル・ベガ&サンチャゴ・ベガ共同監督『十月』に、アルゼンチンのイバン・フント&サンチャゴ・ロサ共同監督『唇』の3人の主演女優に演技賞を授与しました。写真は22日夜の授賞式の模様で、壇上に並んだ受賞者と審査員たち。右端がホン・サンス監督です。

 『ハハハ』は、カナダ移住を決めた映画監督が出発前に友人の映画批評家と会って、マッコリを飲みながら話をしているところから始まります。二人は偶然にもトヨン(統営)という港町に行ってきたばかり。そのときの出来事が交互に語られていくのですが、実は二人とも同じ日にトヨンに行き、同じ人間に会っていたことが観客にはわかるのですが、当人たちはまったく気づかない、という構成。ちょっと『秘花~スジョンの愛』に似ていますが、雰囲気は『アバンチュールはパリで』に近く、ホン・サンス的毒のあるユーモアに溢れていました。中でも、映画監督と関係を持つ観光ガイドを演じたムン・ソリがすばらしく、ヴェネチアで新人賞を受賞した『オアシス』の熱演とはまったく違う、彼女の新たな魅力を発見した思いがしました。

 この日は批評家週間と監督週間でもそれぞれ賞が発表になりました。残念ながら今年は批評家週間の作品を1本も見られなかったのですが、監督週間でヨーロッパ・シネマ・ラベルという賞を受賞した、イタリアのミケランジェロ・フランマルティノの『4度』という映画に、とても感心しました。

 『4度』というのは、イタリア北部の寒村を舞台に、人と動物と自然が生命を繋ぎながら生活している様を描いたドキュメンタリータッチのフィクション。私は初期のエルマンノ・オルミの作風を連想しました。面白かったのは、この映画が受賞したもう1つ賞で、その名もパルム・ドッグ・アワード、訳して名犬賞。羊飼いの老人が死ぬ日のロングショットの長い長い1シーン1カットで、牧羊犬ヴク君がすばらしい名演を披露していて、納得(?)の受賞でした。

(齋藤敦子)