シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)今も軟禁状態が続くパナヒ監督の「アコーディオン」

2010/09/04

 実はヴェネチアではオープニングの前日から上映が始まるのですが、そこでジョルナーテ・デリ・アウトーリ(作家の日々)という部門に出品されているイランのジャファール・パナヒ監督の『アコーディオン』という短編を見ました。これはパナヒが3月にイラン政府によって拘束される以前に作られた9分の短編で、幼いストリートミュージシャンの兄妹が、うっかりモスクのそばで楽器を演奏したために、兄のアコーディオンを取られそうになるが...、という内容の小品ながら心温まる作品でした。

 パナヒは審査員に選ばれたカンヌに来ることが出来ず、不当な拘留に抗議して拘置所でハンガーストライキを行ったことは、カンヌのレポートに書きましたが、映画祭終了直後に釈放され、自宅に戻ったものの、今も軟禁状態が続いています。ヴェネチアも彼を映画祭に招待したのですが、"公判が終わるまで"という理由で当局から国外に出る許可が下りないのだそうです。9月1日にパナヒから映画祭に送られてきた声明が公表されました。

 それによると、"世界中の映画作家や映画ファンは、文化の違いにもかかわらず、ひとつの声で結ばれたコミュニティなのだと感じ、自分もまた、この国際的な映画コミュニティの栄誉ある一員であると思うことが獄中での強い支えになった"とのこと。そして最後は、次のような文章で結ばれていました――"私に送られたすべての支援には、映画を信じ、映画作家の表現の自由を信じる多くの個人または組織からのものもあったように思います。いつか世界中の政府がこの信念を分かち持つ日が来ることを共に祈りましょう"。
 
Venezia2010 Day3 010.jpg さて、開幕翌日の2日、日本映画の先陣を切って、『ノルウェイの森』の公式上映が映画宮殿のサラ・グランデで行われました。写真はその日の午後に行われた記者会見の模様で、左から松山ケンイチ、水原希子、菊地凛子、トラン・アン・ユン監督です。会場には、香港や台湾のジャーナリストも詰めかけ、つたないながら日本語で質問する中国人記者も現れ、村上春樹の人気ももちろんですが、昨今の日本文化の浸透ぶりが伺えました。ラオスで生まれ、幼い頃にフランスに移住し、フランス文化の下で育った"国際人"トラン・アン・ユン監督の演出と台湾の名撮影監督リー・ピンビンによる美しい映像、日本人の俳優、スタッフとのコラボレートによって出来上がった作品は、広い意味で"アジア的"な作品になっていました。

 

(齋藤敦子)