シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(6)国際的評価を受ける日本人監督、園子温と三池崇史

2010/09/11

 日本では酷暑が続いているようですが、今年のヴェネチアは中盤から下り坂で、最高気温も20度程度しかなく、何度も雨が降るあいにくの天候です。老朽化したカジノの会場は雨漏りがひどく、プレスルームのコンピュータが水に濡れてダウンし、ますます新宮殿の完成が待ち遠しいところです。

  映画祭も終盤に入った7日にオリゾンティ部門で園子温監督の『冷たい熱帯魚』の公式上映があり、翌8日に記者会見が行われました。写真上はそのときの模様で、左からでんでん、黒沢あすか、園子温監督、吹越満の各氏です。

  『冷たい熱帯魚』の主人公は、若い後妻と娘の折り合いが悪く、家庭が崩壊しつつある社本(吹越満)。熱帯魚店を経営する彼は、万引きで捕まった娘を助けてもらった縁で、同業者の村田(でんでん)という男と知り合います。大規模な熱帯魚店を経営し、羽振りのいい村田には年の離れた妻の愛子(黒沢あすか)がいて、二人は娘の就職の世話をしてくれたり、なにくれとなく社本に親切にしてくれます。ところがある日、立ち会ってくれと連れて行かれた会議室で、社本は悪魔のような二人の本性を知り、とんでもない犯罪に引き込まれてしまうのです。

 園子温監督は、実際にあった事件(埼玉愛犬家殺人事件)の資料を克明に調査し、それを基にして、崩壊していく家族という自分のテーマを盛り込んだのだそうです。途中から村田夫婦が殺した遺体を解体するところなど残酷な描写がエスカレートしていくので、関係者は観客の反応を気にしていましたが、過去の作品で園監督の作風は国際的に知られており、残酷さと滑稽さが表裏一体になった描写に何度も笑いが起こって、心配は杞憂に終わりました。

Venezia2010_Day8.jpg そして2日後の9日夜、コンペのもう1本の日本映画、三池崇史監督の『十三人の刺客』の公式上映が行われました。写真中はレッドカーペットの模様で、左からプロデューサーのジェレミー・トーマス、山田孝之、三池崇史監督、役所広司の各氏です。

  『十三人の刺客』とは、もちろん工藤栄一監督の傑作『十三人の刺客』のリメイク。工藤作品の筋をほぼ忠実にたどりながら、現代風なアレンジを加えたもの。今や日本映画を代表する国際派となった役所広司が13人のリーダー、島田新左衛門を、山田孝之が甥の島田新六郎を演じています。オリジナルでは片岡知恵蔵と里見浩太朗が演じた役だと思うと隔世の感がありますが、敵方も53騎から200騎、歩行(かち)の侍を含めると300人以上と、大幅にスケールアップしています。

Venezia2010-Day11.jpg 公式上映の行われた会場、定員1100人のサラ・グランデはチケットがソールドアウト。満員のファンが立ち上がって三池崇史監督一行を待ち受けるという熱狂的な歓迎で始まり、上映が終わったときにもスタンディングで大喝采。なかなか帰らない観客に向かって、三池監督が、"この後、『ゼブラーマン2』の上映がありますので"と日本語で退出を促す一幕もありました。

(齋藤敦子)