シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(4)フィルメックスらしいクラシックな味わい

2010/11/29

 今年はコンペ部門に、韓国からは若手の作品が並びましたが、台湾と香港からはベテランが作品をエントリーしました。

 台湾のチャン・ツォーチ監督の『愛が訪れる時』の主人公は、17歳の娘ライチュン。台北で料理店を経営している一家の実権は、父親ではなく妻が握っています。というのは彼女との間に子供ができなかったため、ライチュンの母を家に入れたという経緯があるから。複雑な家庭環境で育ち、父親や母親に反発していたライチュンが、望まない妊娠をしたことで、次第に親の立場が理解できるようになり、成長していく姿を描いています。

 市山プロデューサーとのインタビューにもあるように、家族の絆と愛情をテーマにした昔ながらの台湾映画ですが、人間関係が複雑な上に、父親が病に倒れたり、自閉症の叔父がいたりといった様々な事件が絡まっているのに、すべてをさらりと見せてしまうチャン・ツォーチ監督の演出力が光っていました。11月20日に発表になった台湾のアカデミー賞、第47回金馬奨の作品賞、撮影賞、美術賞の3賞を受賞したそうです。写真は上映前の挨拶の模様で、左からチャン・ツォーチ監督、手のひらに書いたメモを盗み見ながら日本語で挨拶するライチュン役のリー・イージェさん、ライチュンの妹役のリー・ピンインさん、自閉症の叔父役のガオ・モンジェさんです。イージェさんは現在18歳、ピンインさんは17歳で、二人とも映画初出演だそうです。

20101128_4.jpg 香港のダンテ・ラム監督の『密告者』は、凶悪犯罪の摘発に密告者を使いながら非情に徹しきれない刑事(ニック・チョン)と、妹を組織から救うために密告者役を引き受ける男(ニコラス・ツェー)の葛藤を描いた香港フィルム・ノワール。香港の街を縦横に使ってロケした昔ながらの香港アクションで、刑事と密告者それぞれの事情に加えて、派手な襲撃場面やカーチェース、恋愛ドラマと盛りだくさんな娯楽映画でした。大陸からの資本もちゃんと入っていますし、刑事の妻役で中国のミャオ・プーが、強盗団の首相の女役で台湾のグイ・ルンメイが出演していて、3中国合作となっていたのが今風でした。

 両方とも、どちらかといえば商業映画に分類され、国際映画祭のコンペには登場しにくいタイプの作品ですが、こんな風にベテランにも目配りし、クラシックな映画の味わいを大切にするところが、いかにもフィルメックスらしいと思いました。


(齋藤敦子)