シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(5)文化の発信地東京へ試金石

2010/11/29

 今年から新しく始まったネクスト・マスターズを取材してきました。市山尚三プロデューサーとのインタビューにもありますが、文化の消費地から文化の発信地への方向転換を目指す東京都が、アーティストの育成プロジェクトの一環として映像の人材育成プロジェクトとして企画したもの。
 ベルリン国際映画祭のタレント・キャンパスやプサン映画祭のプロジェクトを参考に、映画祭期間中にアジアから若手映像作家を東京に招き、講師のワークショップに参加し、映画祭ゲストの講演を聞き、企画のプレゼンテーションを行うというもの。ベルリンのタレント・キャンパスは3000人の応募者から350人を選ぶという大規模なものですが、フィルメックスでは、今回は各国の有識者に候補者を推薦してもらい、提出された作品を見て20人を選んだとのこと。レベルは高く、既に短編が三大映画祭に出品されていたり、長編を撮っていたりといった優秀な若手揃いだそうです。

 あらかじめ選考されていた8名が企画のプレゼンテーションを行い、27日午後に、優秀な企画の発表と授賞式が行われました。第1回ネクスト・マスターズ最優秀企画賞を受賞し賞金30万円を手にしたのはシンガポールのアンソニー・チェンさん。1984年生まれの26歳で、既に6本の短編を撮り、3年前に短編第2作がカンヌ映画祭の短編部門に出品され、次点に入ったという俊英です。また、スペシャル・メンションにはマレーシアのシャーロット・リム・レイ・クエンさんが選ばれました。リムさんは29歳ですが、蔡明亮の『黒い眼のオペラ』や、アン・リーの『ラスト、コーション』で助監督を務めた経験を持つ、プロの映画人といってもいい人で、昨年、長編デビュー作がマラケシュ映画祭で審査員賞を受賞しています。

 2人とも既に才能が認められている人材ですから、6日間のネクスト・マスターズが彼らの将来にどれほど大きな影響を与えられるかどうかは、はっきり言って未知数だと思います。けれども、ロビーにふらりと現れた侯孝賢監督を参加者たちが囲んで話を聞いたりしている様子を見ていると、どこでもゲストに会え、気軽に立ち話が出来るフィルメックスの規模の小ささと気安さが、映画人と若手との親密な交流を生みのに役立っていることを強く感じました。

 人材育成ですから成果はわかるのはこれからずっと先のこと。東京フィルメックスから、いったいどんな才能が生まれていくのか、この先長い目で見守りたいと同時に、東京都には長い目の支援をお願いしたいと思います。

 写真上は、授賞式の後の記念写真で、前列左から、講師のサイモン・フィールドさん、マティース・ヴァウター・クノルさん、エミリー・ジョルジュさん、侯孝賢監督、後列のノールさんの後ろがシャーロット・リムさん、エミリー・ジョルジュさんの後ろがアンソニー・チェンさんです。

20101128_05_2.jpg 写真下は、26日に行われた侯孝賢監督によるマスタークラスの模様で、『憂鬱な楽園』や『フラワーズ・オブ・シャンハイ』のプロデューサーでもある市山尚三さんを聞き手に、長編デビュー作の『ステキな彼女』や、『珈琲時光』、『レッド・バルーン』の一部を見ながら、製作当時の裏話や、俳優を演出する際の秘訣などを気さくに話してくれました。

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(齋藤敦子)