シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(6完)最優秀作品賞に「ふゆの獣」

2010/11/29

 最終日の28日に受賞結果が発表になり、最優秀作品賞は、内田伸輝監督の『ふゆの獣』に、審査員特別賞は、ハオ・ジェ監督の『独身男』に決定しました。審査員長のウルリッヒ・グレゴールさんによれば、コンペ作品はスタイルやテーマが様々で、それぞれよく出来ていたが、審査員の視点の差から審査は難航し、全員一致の結果を出すことができなかった。惜しくも受賞に至らなかったが、賞に値する作品が多くあった、とのことでした。また、受賞作は"映画の未来のために"というフィルメックスのモットーにのっとって、最もオリジナルで将来性のある作品に与えた、とのことです。

 最優秀作品賞の『ふゆの獣』は、1つの部屋で2組のカップルの恋愛感情がぶつかりあう様子を描いたもの。ノーギャラで出演してくれる俳優をネットで募集し、わずか110万円の製作費で撮ったというミニマルなインディーズ映画ですが、卓越したカメラワークと即興演技を取り入れた演出で、限られた予算の中で高い表現力を発揮していることが高く評価されました。

 ハオ・ジェ監督の『独身男』は、中国東北部の顧家溝という村を舞台に、結婚できずに年老いたラオヤンと仲間の独身男達の生態をユーモラスに描いたもの。ラオヤンは四川省から売られてきた若い娘を買って嫁にしようとしたところ、娘に逃げられて大騒ぎになり、仕方なく旅順に女を買いに出かけたりするのですが、この娼婦との場面が検閲にひっかかり、中国では劇場公開ができないのだそうです。四川省の娘を演じたイェランさん以外の出演者はすべてハオ・ジェ監督の故郷、顧家溝の村人達で監督の知り合い、演技の自然さもさることながら、フィクションとドキュメンタリーが混じった、嘘のような本当の物語です。この作品を強く推したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督は、対象に愛情を持ち、共に協力して作り上げた映画で、完全ではないが、不完全なところに魅力のある作品と評していました。

20101129.jpg 写真は午後に行われた記者会見の後の記念写真で、左からニン・イン監督、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督、ウルリッヒ・グレゴールさん、内田伸輝監督、ハオ・ジェ監督、白鳥あかねさん、リー・チョクトーさんです。


【受賞結果】
最優秀作品賞:『ふゆの獣』内田伸輝監督(日本)
審査員特別賞:『独身男』ハオ・ジェ監督(中国)
観客賞:『Peace』想田和宏監督(日本/アメリカ)

【ネクスト・マスターズ】
最優秀企画賞:『Ilo Ilo』アンソニー・チェン(シンガポール)
スペシャルメンション:『It must be a camel』シャーロット・リム・レイ・クエン(マレーシア) 

(齋藤敦子)