シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)マドンナの「W.E.」でヒートアップ

2011/09/03

20110903_01.jpg
 オープニングのジョージ・クルーニーに続き、2日目はマドンナの登場で会場は大騒ぎ。もちろん歌手としてではなく、監督2作目の『W.E..』が特別招待作品として上映されるからです。
 
 今年は最初の週末までの5日間にアメリカ映画が集中しており、2日目の木曜はマドンナの他にコンペにロマン・ポランスキーの『殺戮』が登場し、金曜はデヴィッド・クローネンバーグの『危険な方法』、土曜はスティーヴン・ソダーバーグの『伝染』、アル・パチーノの『ワイルド・サロメ』、日曜はトッド・ソロンズの『ダーク・ホース』という具合。それぞれの作品に出演したスター達がレッドカーペットを歩くのを見ようと大勢の映画ファンが詰めかけ、例年になく、オープニングからヒートアップ。まさに、ディレクターのマルコ・ミュラーの手腕を見せつけるような凄いラインナップです。

 私がヴェネチア映画祭に来るようになって20年近くになりますが、マルコ・ミュラーほど上手くヴェネチアを運営できたディレクターはいませんでした。2期8年の任期を全うしたディレクターはマルコが初めてですし、特に近年は、資金も地の利もずっと恵まれたローマ映画祭から追い上げられながら、これまで培ってきた経験とコネクションを活かして追随を許さないところなど、見事といっていいと思います。

 そんな彼に代わって、いったい誰にディレクターが任せられるのか。今に至るまで次期ディレクターの名前が発表にならないのは、誰がなってもミュラー以上のディレクションが考えられないからでしょうし、ミュラー自身もそれを自覚していることが、今年の凄すぎるラインナップから透けて見える気がします。

20110903_02.jpg 写真上は、プレスルームに設置されたテレビで、マドンナの会見の模様を見る記者たち。『W.E.』は、シンプソン夫人とエドワード8世の頭文字をとった題名で、映画はシンプソン夫人と、彼女に憧れる現代の女性が、時を隔てて愛を求める姿を交互に描いています。

 写真下は、オリゾンティ部門のオープニング作品に選ばれたアミール・ナデリ監督の『カット』の記者会見の模様で、左から常磐貴子さん、アミール・ナデリ監督、西島秀俊さん。
 イラン出身のナデリ監督は、20年前からアメリカで映画を撮ってきた方ですが、『カット』は監督の念願叶って日本で撮影された日本映画。映画の上映活動をしている映画監督の青年(西島秀俊)が、兄がやくざから借りた映画の製作資金を返すために殴られ屋になるというストーリーに、娯楽映画に席巻された今の映画界に、アートとしての映画の復権を込めた、映画愛に溢れた作品でした。
(齋藤敦子)