シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)さすがの演出に高評価 ポランスキーの「殺戮」

2011/09/04

 連日暑が続くヴェネチア。映画祭が最初の週末を迎えたところで、コンペ部門で最も評価が高い映画は、ロマン・ポランスキーの『殺戮』と、デヴィッド・クローネンバーグの『危険な方法』で、2本とも戯曲の映画化作品です。

 『殺戮』は、日本でも上演されているヤスミナ・レザの戯曲<殺戮の神>の映画化。ニューヨークに住むミドルクラスの2組の夫婦、ジョディ・フォスター&ジョン・C・ライリー、ケイト・ウィンスレット&クリストフ・ヴァルツが、子供の喧嘩を収めるための話し合いを持つことになり、最初は穏やかに話し合っていた4人が、次第に本性をむきだしに本音をぶつけあって"戦う"までを、ポランスキーが堂に入った演出力で見事に描き出しています。

 残念ながら、ポランスキーとジョディ・フォスターはヴェネチアに現れませんでしたが、トッド・ヘインズの『ミルドレッド・ピアース』、スティーヴン・ソダーバーグの『伝染』にも出演し、引っ張りだこの感があるケイト・ウィンスレットが、完璧なドレス姿でレッドカーペットを歩き、会場を盛り上げていました。

20110904_01.jpg 『危険な方法』はクリストファー・ハンプトンの戯曲<トーキング・キュア>の映画化。スイスの精神科医で心理学者のカール・グスタフ・ユング(マイケル・ファスベンダー)、ユングの患者で愛人、のちに自身が分析医となるサビーナ・シュピールライン(キーラ・ナイトレイ)、彼が師と仰ぎ、のちに決別する"精神分析の父"ジークムント・フロイト(ヴィゴ・モーテンセン)との関係を描いたものです。

 驚いたのは、まるでクローネンバーグらしくない作品であること。前景と後景に二重に焦点を合わせた異様な画面構成に、ほんの少し彼らしさを感じたくらいで、誰の映画かと思うくらい、非常に重厚でクラシックな作品になっていました。

 写真上は、『危険な方法』の記者会見の模様で、左からヴィゴ・モーテンセン、クローネンバーグ監督、キーラ・ナイトレイ。"らしくない"作品になった理由を聞かれたクローネンバーグは、「題材に合ったスタイルを選んだだけ」と答えていました。

20110904_02.jpg 写真下は、新宮殿の建築予定地で、ご覧のように掘り返した土地に白いカバーが掛けられたまま、工事が中断されています。
(齋藤敦子)