シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(5)「震災後」を生きる若者たち 園子温監督の「ヒミズ」

2011/09/08

20110908.jpg 映画祭が終盤に入った6日の夜10時、園子温監督の『ヒミズ』の公式上映が主会場のパラッツォ・デル・チネマで行われました。写真はそのときのもので、左から二階堂ふみさん、染谷将太さん、園子温監督です。

 『ヒミズ』は古谷実の同名コミックが原作。両親から虐待され、捨てられた15歳の少年住田祐一(染谷将太)と、彼を見守るクラスメートの茶沢景子(二階堂ふみ)を主人公に、住田が犯した罪と彼らを取り巻く過酷な世界を描いた作品です。ちなみに、ヒミズとはモグラの別称。

 今までオリジナル脚本しか撮っていない園監督にとって、初の原作ものですが、撮影に入る直前に震災が起こったため、急遽、脚本を書き換え、テーマは同じながら、特にラストは、震災後の厳しい世界を生きてかねばならない若者へのエールという意味合いがより強く込められています。

 撮影は一部、撮影スタッフの故郷という震災直後の石巻で行われていて、津波で荒廃した町の光景が、主人公の荒涼とした心象風景を代弁するように使われています。
 被災地を撮ることに関して、かなり悩んだという園監督ですが、"ドキュメンタリーが撮ってよくて、フィクションがダメという区別はおかしいし、今撮らなければ一生後悔すると思って撮った"ということでした。
 映画を完成した後、再び石巻を訪れ、避難所で炊き出しのボラティアをしたのだそうです。この後も、福島の放射能問題を扱った映画を企画しているとのことでした。

 園子温監督の作品はヴェネチアには昨年『冷たい熱帯魚』がオリゾンティ部門に出品されているので、2年連続の登場。独特の過激でパワフルな世界に慣れていたせいか、上映終了が深夜を過ぎるのにも関わらず多くの観客が最後まで残って大きな拍手を送ってくれました。

(齋藤敦子)