シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(7)母子愛に共感 塚本監督の「KOTOKO」

2011/09/10

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 映画祭の終わりが近づいた8日の夜、オリゾンティ部門で塚本晋也監督の『KOTOKO』と、水江未来監督の短編アニメ『モダンNo.2』の公式上映が行われました。

 『KOTOKO』の題名は、沖縄出身のシンガーソングライターCocco(こっこ)が演じる主人公のシングルマザー、琴子のこと。幼い息子を一生懸命に育てているが、あまりに一生懸命すぎてうまくいかず、自傷癖があり、歌っているときだけ不安が消える、そんな不器用で繊細な女性の生き方を描いたものです。

 塚本監督は、7年前に『VITAL』のエンディングテーマ曲にCoccoから作品を提供してもらって以来、ずっと彼女との映画作りを考えていたのだそうです。彼女から聞き出した話を基に脚本を書き、どこからどこまでと分けられないくらい密接に協力しあいながら作り上げていった作品とのこと。母子の愛情という、今までの塚本作品にはなかったテーマを、これこそ塚本作品としか言いようのない作品に仕上げていました。

 写真上は、公式上映後に拍手を受ける塚本晋也監督。母子愛という普遍のテーマがイタリアの塚本ファン層を大幅に広げたようで、大勢の人々が会場から去らずに拍手を送ってくれました。翌9日にオリゾンティ部門の記者会見が行われ、そのときにうかがった話によれば、『KOTOKO』もまた、撮影に入る直前に震災が起こって、一時は撮影不可能かとも思われたそうです。が、震災後の放射能問題で、様々な母親達を身近に見て、大事なものを大事に育てることの難しさを肌で感じたことが映画に反映されたのではないか、とのことでした。

 今年の映画祭はいろいろな新機軸がありましたが、一番大きな変化が、映画祭のIT化です。その1つが、今年からチケットがネットで買えるようになったこと。これで自宅のパソコンでチケットを購入し、プリンターで印刷した紙を持ってくるか、あるいはスマートフォンにダウンロードした画面を入口で見せればよく、窓口に長い列を作る必要がなくなりました。写真下は、『ヒミズ』の上映の際、スマートフォンを持っていた男性に見せてもらった"チケット"です。また、今年はプレスルームのパソコン持参者用の場所が(やっと)広くなったり、オリゾンティ部門の上映作品の情報が毎日メールで届くようになったりしました。
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(齋藤敦子)