シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(4)活劇の魅力「剣の出自」

2011/12/01

 27日はコンペ作品から中国の「剣の出自」とフィリピンの「魚の寓話(ぐうわ)」を見た。クリスマスを控えた週末とあって、この時期恒例のマルシェには人が集まり、映画館も前日(土曜日)に負けない観客で賑わった。

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腕試しのつもりが追い払われそうになるリャン(右)
      =「剣の出自」より

 「剣の出自」(2011年)は日本の海賊、倭寇(わこう)に脅かされていた16世紀の中国明朝が舞台。南部沿岸の町、開城には4つの武術流派があり、腕試ししたい者は、このいずれかを訪れることになっていた。ある日、リャン(ユエ・チェンウェイ)という若者が仲間とともに、ある流派の門をたたいたが、腕試しどころか、仲間は捕らわれ、彼も命を付けねらわれる。

 彼の使っていた剣が倭寇の剣だと見なされたためだ。

 一方、山中に隠棲していた剣客シウは、リャンのうわさを聞いて、町に出て、彼と対決する。リャンの剣が倭寇のものでなく、中国のある部隊が使っていた剣であることを人々に知らせ、誤解を解く。

 リャンは孤独な戦いを強いられるが、悲壮感はなく、歌舞の女性も巻き込みながらコミカルさも盛り込んで展開する。徐浩峰監督は、剣劇を様式美にのせて華麗に見せる一方で、倭寇の刀というだけで過剰に反応する武術家たちの右往左往ぶりもあぶり出す。無条件に楽しめる。黒澤明監督やカンフー(武侠活劇)をアートにしたキン・フー監督にならって、活劇ジャンルを復活させたい、そんな監督の意欲が伝わってきた。

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水族館で"息子"と一緒に魚に同化するリナ
        =「魚の寓話」より

 「魚の寓話」(2011年)は、マニラの"ごみの郊外"といわれるスラム街に住むことになった、ミゲル、リナ夫妻の物語。2人は50歳になっているが、リナは子どもを生みたいと切望していた。そんな中、彼女は妊娠、出産を心待ちにする。ある洪水の夜、家が浸水、彼女は水に浸かりながら産気づき、水中へ産み落としてしまう。慌てる助産婦が、すくい上げたのは、何と魚だった。

 彼女は、この魚を神からの授かりもの、息子として育て始める。夫は妻の気持ちが分からず、この魚を川に放そうとするのだが...。

 巨大なごみの山は終日くすぶり続け、熱を持っている。そこに分け入ってリサイクルできる物を探すことで生計を立てる人たち。アドロフ・ボリナガ・アリックスJr監督(33)は、過酷な生活ぶりを鮮やかなフレーミングで切り取りながら、そこに生きる人たちが決して、人生に負けてばかりいないことを描き出す。

 リナが乳母車に魚を乗せ、水族館を訪ねるシーンがジーンとさせる。ドーム状の水槽をくぐって、リナは自身も息子とともに魚になったように感じ、じっとそこにとどまるのだ。愛する対象は、人間なら人間、というだけではない。何であれ、その対象とはなりえる。が、それを認めたくない人間もいるのが現実だろう。終わった後、盛んな拍手が続いた。

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 日曜日、マルシェが出店した広場はどこも大にぎわい。1㍍以上ある高下駄を長いズボンで隠し、愛きょうを振りまくのっぽの天使(?)の出現には、大人も子どももビックリ。すぐ人だかりができた。移動型のメリーゴーランドも登場して、子どもたちも大はしゃぎ。大人たちはカフェへ。ビールやワインでのどを潤しながら夜遅くまで語り続けていた。

nantes11_04_01.jpg天使が出現!? そののっぽぶりにびっくり!
=パレ・ロワイヤル

 

(桂 直之)