シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(5)中上作品を映像化/若松監督の「千年の愉楽」

2012/09/05

20120905_01.jpg 先週末から天気が崩れ、週明けの月曜日もあいにくの空模様だったのですが、午後の『アウトレイジビヨンド』の公式上映前には雨も上がり、レッドカーペットの前に大勢のたけしファンが集まりました。もちろん、サルデーニャ島サッサリの"北野武ファンクラブ"の面々も、"映画の神様北野武"と書かれたおそろいのTシャツを着て最前列に陣取っていました。

 『アウトレイジビヨンド』は、カンヌ映画祭に出品した『アウトレイジ』の続編。関東と関西のやくざ組織の抗争と、それに乗じて闇の権力の舵取りを狙う警察との三つ巴のパワーゲームを描いたもの。前作では残酷な暴力場面が話題を呼びましたが、今回は直接的な暴力というより、関東と関西のやくざが怒鳴り合う、言葉と言葉の闘いような、ちょっと違った角度からバイオレンスにアプローチしているのが特徴。やくざを辞めたいと願いながら、義理人情のしがらみで抗争に巻き込まれていく大友(ビートたけし)の悲しさと怖さがストーリーの軸になっています。 
 写真(上)は上映後の模様で、最後はやはり、場内総立ちのスタンディング・オベーションになりました。

 翌4日には、オリゾンティ部門に出品されている若松孝二監督の『千年の愉楽』の正式上映と記者会見が行われました。
 写真(下)は記者会見後の模様で、左から原田麻由さん、高岡蒼佑さん、若松孝二監督、高良健吾さんです。

20120905_02.jpg 『千年の愉楽』は中上健次の同名小説の映画化で、中上とは小説を知るより前に飲み友達だったという若松監督が、連合赤軍と三島由紀夫を描いた後、どうしても撮っておきたかったという念願の企画。若松監督は、製作・配給・宣伝のすべてを一手に引き受けて映画を作ってきた真の意味での映画作家で、この作品も撮影13日、編集2日という驚異の速さで作り上げたそうです。"最初のテイクが一番良い"という監督は、テストなしで本番に臨むこともしばしば。演技は完全に俳優の自由に任されており、高良さんは"自分がこれまで生きてきた中で培ってきたものを出さねばならない。怖いが楽しい"と語っていました。

(齋藤敦子)