シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(9完)僅差制し金獅子賞/ギドク監督の「ピエタ」

2012/09/09

 9日夜の授賞式で最高の栄誉を受けたのは、キム・ギドク監督の『ピエタ』でした。韓国映画として史上初の金獅子賞受賞で、さぞ韓国のプレスは喜んでいるだろうと思いきや、記者会見場にいたアジア系のジャーナリストのほとんどは日本人か中国人で、なぜか韓国人の姿がなかったのが印象的でした。

 授賞式後の記者会見では、審査の内容については外に漏らさないと語っていた審査員たちでしたが、審査員長のマイケル・マンがアメリカの業界紙ハリウッドリポーターの電話インタビューに応じ、"金獅子賞の作品は他の賞とダブれないため、アンダーソンとキム・ギドクの賞を交換した"とバラしてしまいました。つまり、それだけ男優賞が動かしがたく、キム・ギドクとアンダーソンが僅差だったということです。キム・ギドクがアンダーソンに勝てたのは、彼の思いの強さが運を引き寄せたからかもしれません。

 自分の男優賞と、アンダーソンの銀獅子賞を代理で受賞するため、急遽ヴェネチアに飛んで帰ってきたフィリップ・シーモア・ホフマンは、嬉しそうにトロフィーを受けとっていましたが、その後、マイケル・マンが誤って銀獅子ではなく審査員特別賞を渡したことが判明。壇上に呼び戻されて、本当の受賞者であるウルリヒ・ザイドルと賞を交換するという珍事もありました。
 またも受賞を逸したベロッキオは、会場に姿を見せませんでした。

 オリゾンティ部門でオリゾンティ賞を受賞したのは王兵の『三姉妹』でした。2年前に『無言歌』という傑作をコンペに出しながら、審査員長のクエンティン・タランティーノのきまぐれで受賞に至らなかったリベンジを、これで果たしたことになるかもしれません。映画祭の賞とは本当に運の巡り合わせだなと、しみじみ思った年でした。


【受賞結果】
●コンペティション部門
金獅子賞(作品賞):『ピエタ』監督キム・ギドク(韓国)
銀獅子賞(監督賞):ポール・トーマス・アンダーソン『ザ・マスター』(アメリカ)
審査員特別賞:『パラダイス:信仰』監督ウルリヒ・ザイドル(オーストリア)
ヴォルピ杯 男優賞:フィリップ・シーモア・ホフマン、ホアキン・フェニックス

『ザ・マスター』女優賞:ハダス・ヤロン(イスラエル)

『穴埋め』監督ラマ・バーシュテイン

マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞):ファブリツィオ・ファルコ(イタリア)

『眠る美女』監督マルコ・ベロッキオ&『息子だった』監督ダニエーレ・チプリ

脚本賞:『五月の後に』監督オリヴィエ・アサヤス(フランス)
技術貢献賞(撮影賞):ダニエーレ・チプリ(イタリア)
『息子だった』監督ダニエーレ・チプリ

●未来の獅子賞(新人監督賞):『型』監督アリ・アイディン(トルコ)

●オリゾンティ部門
オリゾンティ賞(作品賞):『三姉妹』監督ワン・ビン(中国)
審査員特別賞:『タンゴ・リブレ』監督フレデリック・フォンテーヌ(ベルギー)
短編賞:『インヴィテーション』ユ・ミニョン(韓国)

●名誉金獅子賞:フランチェスコ・ロージ

●監督ばんざい賞:スパイク・リー

●国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI)

コンペ部門:『ザ・マスター』

監督ポール・トーマス・アンダーソン

オリゾンティ部門&批評家週間部門:『インテルヴァッロ』

監督レオナルド・ディ・コスタンゾ(イタリア)

20120909_01.jpg金獅子賞のトロフィーにキスするキム・ギドク監督


20120909_02.jpg審査員特別賞のウルリヒ・ザイドル監督


20120909_03.jpg男優賞のフィリップ・シーモア・ホフマン


20120909_04.jpg女優賞のハダス・ヤロン


20120909_05.jpg脚本賞のオリヴィエ・アサヤス監督


20120909_06.jpg技術貢献賞の撮影監督兼監督ダニエーレ・チプリ


20120909_07.jpgマルチェロ・マストロヤンニ賞のファブリツィオ・ファルコ


20120909_08.jpg未来の獅子賞のアリ・アイディン監督


(齋藤敦子)