シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)出品、会見の中止相次ぐ/不毛な政治の介入

2012/10/25

 今年の映画祭は開催前から政治に揺れています。特に9月の尖閣諸島国有化から派生した日中関係の悪化により、中国国内で激化した反日運動の余波で、アジアの風部門に出品が予定されていた香港映画『浮城』が9月末にキャンセルになった他、TIFF特別感謝賞の受賞が決まっていたレイモンド・チョウ氏も直前で"中耳炎悪化でドクターストップにより"来日中止になりました。

 実は22日の審査員記者会見後に、コンペ部門の中国映画『風水』の記者会見が予定されていたのですが、それもキャンセルになりました。

20121025.jpg 写真は、出席予定だった撮影監督に代わって、事情を説明する東京国際映画祭の都島信成事務局長です。

 『風水』は、開幕直前の18日に中国側が北京で会見を開き、参加をとりやめると発表、監督と出演者の来日が中止になりました。映画祭側は"双方の合意がなければ出品を取りやめることはできない"という契約の条項を尊重し、予定通りコンペ作品としての上映を決定、別ルートから『風水』の撮影監督リウ・ヨウニエン氏にコンタクトし、来日が実現したのでした。が、来日したリウ氏から製作会社の意向を無視して勝手な宣伝活動はできないと申し入れがあり、結局、記者会見、舞台挨拶、Q&Aがキャンセルになった、というわけです。

 世界から大きな注目を集める映画祭は、政治の影響を受けやすい場でもあります。東京では2年前にも台湾の呼称に中国側がクレームをつけ、台湾の代表団がオープニングの出席をキャンセルするという出来事がありましたが、今回のような大きな軋轢が生じたのは、
25回目となる映画祭の歴史で初めてのことでしょう。とはいえ、映画祭とは様々な国の映画を見て、様々な国の文化を知り、友好を深める場であって、政治のプロパガンダの場ではないし、そういう目的に使われるべきではありません。

 今回の東京国際映画祭の判断は当然で、都島事務局長の"映画祭は文化交流の場であって、政治を介入させることはあってはならない"という発言に私は全面的に賛成です。真摯で温かな目で見ること、それが他国の文化を知るための初めの1歩です。映画ファンも簡単に政治に踊らされることがないよう願ってやみません。


(齋藤敦子)