シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(4)女優賞に最も近いパウリーナ・ガルシア

2013/02/14

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 11年ぶり2度目のベルリンなので例年のレベルがわからないのですが、友人の話によればコンペ部門は昨年より若干低調だということです


 映画祭前半で批評家の評価が最も高いのは、チリのセバスチャン・レリオの『グロリア』です。主人公は、夫と離婚し、子供も成人して手を離れ、独りで生活している58歳のグロリア。夜な夜なシングルバーで男を漁るグロリアの前に、7歳年上のロドルフォが現れます。

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 グロリアは彼との交際を次第に真剣に考えるようになるのですが、ロドルフォは離婚した妻と娘たちといまだに同居しており、肝心なときに決まって携帯で呼び戻されるのです。豪を煮やしたグロリアは、ついに...、というストーリー。監督によれば、チリの現実を反映したものだそうです。迫りくる老いを意識しながら、人生にもう一花咲かせようと必死なグロリアを見事に体現したパウリーナ・ガルシアの演技が素晴らしく、女優賞候補の最右翼でしょう。

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 映画祭が後半に入った2月12日に、今年の期待の2本、ジャファル・パナヒ&カンボズィア・パルトヴィの『閉じたカーテン』と、スティーヴン・ソダーバーグの『副作用』の上映が行われました。


 『閉じたカーテン』の主人公は、秘かに犬を飼うために、海辺の別荘にやってきた男(カンボズィア・パルトヴィ)。カーテンを閉め切って隠遁生活を始めたものの、犬のトイレの砂を変えに外に出た隙に警察に追われた兄妹が逃げ込んできて...、という風に進んでいきます。


 別荘に隠れ住む男とは、もちろんパナヒの現状を反映した設定で、彼がどうしても手放せない犬とは、パナヒにとっての創作活動のことでしょう。中盤になって映像が(文字通り)反転すると、パナヒ自身が画面に登場し、そこからフィクションと現実の境界がさらに複雑に入り乱れていきます。


 『副作用』は、新進気鋭の精神科医(ジュード・ロウ)が、自分の処方した薬の副作用で、精神不安定な若妻(ルーニー・マーラ)が夫を殺すという事件が起き、社会的な信用を失ってしまうのですが、やがて事件の裏に隠された真相に気づいて...、というクライム・サスペンス。ソダーバーグのテンポのよい演出で面白く見せるのですが、完全な商業映画なので、コンペ作品としては、ちょっと食い足りない気がしました。

 

 写真(上)は、会場のテレビで『閉じたカーテン』の記者会見の中継を見入るプレス関係者。

 写真(中)は「グロリア」の1シーン。

 写真(下)は、主会場ベルリナーレ・パラストの外で、パナヒの出国が認められなかったことに対して支援者が抗議活動を行っているところです。

(齋藤敦子)