シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)どう守る?自由な製作の現場

2013/05/20

young&beautiful03.jpg オープニングの日から天気が崩れ、雨模様のぐずついた日々が続いています。去年は大統領選挙を避けて、いつもより1週間ほど開幕を遅らせたのですが、今年も昨年を踏襲し、例年より遅めの開催。おかげで天気も去年を引きずったということなのでしょうか。

 さて、オランド大統領率いる社会党政権のこの1年の採点簿が今マスコミを賑わしていますが、実は昨年はフランス映画界にとっては観客動員も製作本数も記録的だったのだそうで、その好調を反映してか、今年のカンヌではいつも以上にフランス映画がクローズアップされています。

 コンペ部門を例にあげると、フランソワ・オゾン、アルノー・デプレシャン、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、アブデラティフ・ケシシュ、アルノー・デ・パリエール、アスガー・ファルハディ、ロマン・ポランスキーの作品がフランスの製作会社を母体として製作されたもの。それも、オゾンの『ヤング&ビューティフル』は、フランス人の監督がフランス人の俳優を使ってフランスで撮った純粋なフランス映画ですが、フランスを拠点に活躍する女優ヴァレリア・ブルーニ=テデスキが母国イタリアで撮った『イタリアの城』や、『別離』でアカデミー外国語映画賞を受賞したイランのアスガー・ファルハディが、フランスでフランス人のスタッフ&キャストを使って撮った『過去』(昨年のアッバス・キアロスタミが日本で撮った『ライク・サムワン・イン・ラヴ』と同じケース)など、バラエティに富んでいます。

 しかし、フランス映画界の好調には早くも暗雲がきざしています。それは、撮影現場の労働条件をさらに厳しく管理する法案が提出されていることで、法案が可決されると、今までスタッフやキャストのギャラを削ったり、深夜まで撮影を続けたりといったギリギリの状態で作られてきた小規模なインデペンデント映画の現場が直撃され、ヌーヴェル・ヴァーグ以来のフランス映画の美点である、少人数のスタッフによる自由な映画作りが不可能になってしまうのです。

 昨年、この欄の東京フィルメックス・レポートで、邦画は興行的には好調なものの、小規模な映画作りがさらに厳しい状態になっているという市山尚三ディレクターのお話をお伝えしましたが、同じことがフランスでも起こっているということでしょうか。富めるものはさらに富み、貧しいものはさらに貧しくという世界的な階級の二極化が映画界を浸食している、そんな印象を受けています。

 写真はフランソワ・オゾン監督の「ヤング&ビューティフル」の1シーンです。

(齋藤敦子)