シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(9・完)前評判通りの高評価/パルムドールに「アデルの人生」

2013/05/28

palm2013.jpg 26日夜の授賞式では、いつものように短編コンペとカメラ・ドールから結果発表が始まったのですが、コンペ部門の賞に入って、例年なら審査員賞のところを、まず男優賞が発表されたので、ちょっとびっくりしました。男女優賞の次が脚本賞だったのも例外的でしたが、最後のパルム・ドールで、『アデルの人生』のケシシュ監督と主演の二人の女優の名前が呼ばれたときに、その理由がわかった気がしました。

 おそらく、最高賞と他の賞が重複できないという映画祭の規約があるため、本来ならパルムと女優賞の2賞を『アデルの人生』に与えたいところを、このような措置にしたのではないでしょうか。昨年のヴェネチア映画祭でも、男優賞が動かなかったために金獅子賞が入れ替わったことは、この欄でも触れました。実はこのように規約が改正されるきっかけを作ったのは、1991年に審査員長のロマン・ポランスキーがコーエン兄弟の『バートン・フィンク』にパルム、監督賞、男優賞の3賞を与えたことで、今年は当のポランスキーもコーエン兄弟も、揃ってコンペにエントリーしていたのには歴史を感じました。

 パルム・ドールの『アデルの人生』は、15歳の女子高生アデルが、髪を青く染めた美大生のエマに恋をし、熱烈に愛し合うようになるが、ちょっとした浮気が原因で別れてしまうまでを、アデルが高校を卒業し、小学校の先生になるまでに渡って描いたもので、"第1章&第2章"という副題がついていて、これからまだ続きがあることを匂わせています。当初から前評判が高かった作品で、上映後はフランスを中心とした批評家から全面的に支持され、その勢いのままにパルム受賞となりました。

 写真は左からアブデラティフ・ケシシュ監督、アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥです。

 日本にとって大きな喜びは、是枝裕和監督の『そして父になる』が審査員賞に選ばれたことでしょう。こちらではフランスで1988年に大ヒットしたエチエンヌ・シャティリエーズ監督の『人生は長く静かな河』にストーリーがそっくりだと指摘されていたのですが、設定は同じでも作品の質がまったく違うので、審査のマイナスにはならなかったようです。

 女優賞のベレニス・ベジョは、2011年にジャン・デュジャルダンが男優賞を獲った『アーティスト』の相手役で、監督ミシェル・アザナヴィシウスの妻でもある人。『アーティスト』はコメディでしたが、今回はアスガー・ファルハディ監督の丁寧な演出に応えての、シリアスな演技で実力が認められました。

 男優賞のブルース・ダーンは1936年生まれで、ヒッチコックの遺作『ファミリー・プロット』や、ハル・アシュビーの『帰郷』で知られる性格俳優。最近ではタランティーノの『ジャンゴ繋がれざる者』にも顔を出していました。1990年にパルム・ドールを受賞した『ワイルド・アット・ハート』に主演したローラ・ダーンの父親でもあり、23日の記者会見には娘のローラも姿を見せていました。

 アレクサンダー・ペイン監督の『ネブラスカ』は、雑誌が販促で送った懸賞広告を当選したものと信じる父親を連れて、モンタナからネブラスカへ車で
旅する息子の姿をモノクロームで描いたロード・ムービー。アメリカ中西部の広大な風景の中で、ささやかに生きてきた頑固で無口な老人をブルース・ダーンが見事に体現していました。


◎受賞結果

【コンペティション部門】
パルム・ドール:『アデルの人生』監督アブデラティフ・ケシシュと主演アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥ。(フランス)
グランプリ:『インサイド・ルウェイン・デイヴィス』監督イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン(アメリカ)
監督賞:アマット・エスカランテ 『エリ』(メキシコ)
審査員賞:『そして父になる』監督 是枝裕和(日本)
脚本賞:ジャ・ジャンクー 『天注定』監督ジャ・ジャンクー(中国)
女優賞:ベレニス・ベジョ 『過去』監督アスガー・ファルハディ(フランス/イラン)
男優賞:ブルース・ダーン 『ネブラスカ』監督アレクサンダー・ペイン(アメリカ)

【短編コンペティション部門】
パルム・ドール:『金庫』監督ムン・ビョンゴン(韓国)
次点:『鯨の谷』監督グドムンドル・アルナー・グドムンドソン(アイスランド)
『37°4S』監督アドリアーノ・ヴァレリオ(イタリア)


カメラ・ドール賞
『イロ・イロ』監督アンソニー・チェン(シンガポール)

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【グランプリ】

コーエン兄弟に代わってグランプリの賞を受けたオスカー・アイザック

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【監督賞】

監督賞のアマット・エスカランテ監督

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【審査員賞】

審査員賞の是枝裕和監督

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【脚本賞】

脚本賞のジャ・ジャンクー監督

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【女優賞】

女優賞のベレニス・ベジョ

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【男優賞】

帰国したブルース・ダーンに代わって賞を受けたアレクサンダー・ペイン監督

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【短編コンペ部門パルム・ドール】

左からアドリアーノ・ヴァレリオ監督、ムン・ビョンゴン監督、グドムンドル・アルナー・グドムンドソン監督

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【カメラ・ドール】

アンソニー・チェン監督と審査員長のアニエス・ヴァルダ

(齋藤敦子)