シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)震災に向き合う目。多様に、感動とともに。

2013/10/15

yama13_03_01.jpg 「ともにある」は震災をきっかけに急遽作られたプログラムで今年が2回目。山形美術館を会場に、内外の監督が震災と向き合った作品15本が上映されました。私はその中で、宮森庸輔監督の『輪廻 逆境の気仙沼高校ダンス部』と島守央子監督の『ソノサキニ』という2本の中編を見ました。本当は全作品を見たかったところですが、なかなか時間が合わず、本当に心残りでした。

 私が見た12日の上映回では、2作品の前に、福島県立相馬高校放送部が制作した『相馬高校から未来へ』という8分の短編が上映されました。震災後、子供だからといって自分たちの声を聞いてもらえない状況にいらだった相馬高校の女子高生が、<今伝えたいこと(仮)>と題する劇を作り、全国各地で上演する際に長崎や水俣を訪れ、福島が長崎や水俣と繋がっていることを発見していくという感動的なドキュメンタリーで、第60回NHK杯全国高校放送コンテストで優勝した作品です。

yama13_03_02.jpg 『輪廻 逆境の気仙沼高校ダンス部』は、津波で被害を受け、学校が避難所になった気仙沼高校ダンス部が、さまざまな苦労を乗り越えながら、震災をテーマにした『輪廻』というモダンダンスを作りあげていく過程を追ったドキュメンタリー。何ひとつ元通りにならない絶望的な状況にも、"完全復活"を宣言して笑顔で立ち向かっていく部員たちの健気さに心を打たれました。

 『ソノサキニ』は、八戸市で4代続く魚の加工会社を経営する父親が、津波に呑み込まれた会社を建て直そうと奔走する姿を、娘である島守央子監督が見つめた作品。京都造形芸術大学で映画を学ぶ島守さんが、偶然実家に帰省している際に震災に遭遇し、それがきっかけで父親に目を向けるようになります。震災で工場を失い、家族のような社員がバラバラになっていく状況を何とか建て直そうとする4代目社長の姿にも胸が痛むのですが、父を見つめるカメラに何とも言えない愛情がこもっていて、それが何より感動的でした。

 娘が父/母を見つめるといえば砂田麻美監督の『エンディングノート』や、加藤治代監督の『チーズとうじ虫』という秀作があります。娘には息子にはない特別な目があるのかどうかはともかくも、島守監督にも、社長をやめざるを得なくなった父親の"ソノサキ"をさらに追い続け、ぜひ1本の長編として完成してもらいたいと思いました。

 写真(上)は上映前に挨拶する宮森庸輔監督と島守央子監督、右端がコーディネーターの小川直人さん。写真(下)は「ソノサキニ」の1場面で、会社を辞めることになった工場長の手を握る島守社長(右)。

(齋藤敦子)