シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(5完)大賞に「我々のものではない世界」/マルケル特集で朗読会

2013/10/19

yama13_05_02.jpg 10月16日夕、授賞式が行われ、以下のような結果が発表されました。今年の審査員は足立正生さんを長として、フィリピンのラヴ・ディアス、フランスのジャン=ピエール・リモザン、マレーシアのアマール・ムハマド、ドイツのドロテー・ヴェナーの各氏で、全員映画監督です。

 大賞のフラハティ賞を受賞した『我々のものではない世界』は、イスラエル占領下で難民として生きるパレスチナの人々の苦難を見つめたドキュメンタリーで、日本赤軍の一員としてPFLP(パレスチナ解放戦線)の活動に加わっていた足立さんらしい選択だと言えるかもしれません。今年の問題作だった『殺人という行為』は最優秀賞にあたる山形市長賞を受賞しました。
 正味3日という短い滞在だったため、コンペの作品はもとより、アジア千波万波の作品がほとんど見られなかったのはとても残念でした。写真は大賞を受けた「我々のものではない世界」の1シーンです。

 今年、山形に行こうと思ったきっかけは、昨年7月に91歳で亡くなったフランスの映像作家クリス・マルケルの特集が組まれたことです。親日家で、代表作の『サン・ソレイユ』など日本を舞台にした作品を多く発表しているマルケルとは個人的にも親しくお付き合いをさせていただいたこともあり、彼の作品を改めて見直してみたいと思ったのでした。写真は、パリのポンピドーセンターでキュレ

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ーターを務めるエチエンヌ・サンドランさんとクリス・マルケル・ファンクラブの会長を自認する上智大学教授の福崎裕子さんが、クリス・マルケルの『ル・デペイ(異/祖国)』を朗読する模様です。

 『デ・ペイ』は、日本を訪れた旅人が、日本で見つけた風景を通して国について考察するという作品で、マルケルが撮った映像をスクリーンで写しながら、フランス語と日本語のテキストを交互に朗読するというもので、『サン・ソレイユ』のもとになった作品です。この朗読会と合わせて、1953年のアラン・レネとの共作の『彫像もまた死す』から、2012年の『オリンピア52についての新しい視点』までの45作品が上映されました。

 若くしてレジスタンス運動に身を投じてから、マルケルの人生は旅と闘いで貫かれ、彼の旅と思索の記録が映像作品として残されてきました。旅と猫と友人を愛した彼の足跡をたどる特集が、彼の愛した日本の山形で組まれたことを、きっと天国で喜んでいることでしょう。

【受賞結果】
●インターナショナル・コンペティション部門
ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞):『我々のものではない世界』監督マハディ・フルフェル(パレスティナ、アラブ首長国連邦、イギリス)

山形市長賞(最優秀賞):『殺人という行為』監督ジョシュア・オッペンハイマー(デンマーク、インドネシア、ノルウェー、イギリス)

優秀賞:『リヴィジョン/検証』監督フィリップ・シェフナー(ドイツ)
    『サンティアゴの扉』監督イグナシオ・アグエロ(チリ)

特別賞:『蜘蛛の地』監督キム・ドンリョン、パク・ギョンテ(韓国)

●アジア千波万波部門
小川紳介賞:『ブアさんのござ』監督ズーン・モン・トゥー(ヴェトナム)

奨励賞:『怒れる沿線:三谷(さんや)』監督チャン・インカイ(香港)
   『モーターラマ』監督マレク・シャフィイ、ディアナ・サケブ(アフガニスタン)

特別賞:『戦争に抱かれて』監督アッジャーニ・アルンバック(フィリピン)

*その他の賞などの詳細は、映画祭のHP(http://www.yidff.jp/home.html)をご覧ください。

(齋藤敦子)