シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)大自然の下、驚きのエピソード/エルリングソン監督の「馬々と人間たち」

2013/10/25

tokyo_p_2013_03_01.jpg 今年から<コンペティション>と<アジアの未来>という2つの部門がコンペになったため、賞に引っかかる可能性のある映画は見ておかねばと、いつもより多めに映画を見たのですが、賞の対象が増えて23本になり、とても全部は見きれなくなってしまいました。コンペ部門で面白かったのは、韓国のイ・ジュヒョン監督の『レッド・ファミリー』とアイスランドのベネディクト・エルリングソン監督の『馬々と人間たち』の2本です。

 『レッド・ファミリー』は、誰もがうらやむ理想の家族が実は北朝鮮から潜入してきたスパイの疑似家族だった、という奇想天外な設定で、隣に住む喧嘩ばかりしている韓国人家族と交流するうちに次第にお互いに影響を受けて...、というストーリー。日本でも大ヒットした『シュリ』あたりから続く北朝鮮スパイものをパロディにしたような映画です。製作と脚本をキム・ギドク監督が手掛けているので、毒のあるユーモアが散りばめられていて、それでいて人間にとって祖国とは何か、幸せとは何かという根源的な問いを突きつける、感動作になっていました。

 『馬々と人間たち』は、野生の馬を調教したり、使役したりして生計を立てている村を舞台に、馬と人間にまつわるエピソードを綴ったもの。沖を通るロシア船まで馬に乗ってウォッカを買いに行く男、道に迷って吹雪に見舞われ、馬を殺して腹の中にもぐりこんで助かる男など、驚くべきエピソードが続くなかに、厳しい大自然の中で暮らす馬と人間の性と生活が浮かび上がってきます。

 エルリングソン監督は俳優出身で、この作品が長編デビュー作だそうで、製作を『精霊の島』や『コールド・フィーバー』で日本でもお馴染みのフレドリク・トール・フレドリクソン監督が担当しています。

その他の作品で気になったのは、『北京好日』で1993年の第6回東京国際映画祭の<ヤングシネマ>部門で大賞の東京ゴール賞を獲ったニン・イン監督のひさびさの新作『オルドス警察日記』。これはモンゴル自治区のオルドスを舞台に、私生活を犠牲にして公務に尽くし、殉職した警察署長ハオ・ワンチョンの実話の映画化で、熱血漢ハオ署長の人柄に急速に発展していく新興工業都市の問題を交えて描いた作品です。

 メキシコの『エンプティー・アワーズ』は、浜辺のモーテルの管理を任されることになった17
歳の少年セバスティアンと、いつも恋人に待ちぼうけをくわされるミランダとの淡い恋を描いたもの。監督のアーロン・フェルナンデスはパリで映画を学んだ新鋭で、これが長編2本目。登場人物の心の動きが繊細に描かれ、あざとさのないところに好感を持ちました。

  写真は『馬々と人間たち』の記者会見の模様で、ベネディクト・エルリングソン監督(右)とプロデューサーのフレドリク・トール・フレドリクソンさんです。

(齋藤敦子)