シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)原発事故。放射能を浴びて・・/松林要樹監督の「祭の馬」

2013/11/26

2013filmex_p_02_01.jpg 開催3日目の25日夜、コンペティション部門にエントリーした2本の日本映画のうちの1本、松林要樹監督の『祭の馬』が上映されました。

 『祭の馬』は『相馬看花』という福島をテーマにした連作の第二部で、第一部の『奪われた土地の記憶』に続く作品。津波を生きのびながらも原発事故で放射能を浴びてしまった1頭の元競走馬の運命を淡々と綴ったドキュメンタリーです。

 上映後のQ&Aでのお話によると、震災直後、南相馬に救援物資を届けにいった松林監督が、偶然見かけた厩舎に取り残された馬たちがその後餓死したと知ったことが映画作りのきっかけだったそうです。初めは馬の扱いがまったく分からなかったという監督が、元競走馬のミラーズクエストという馬に出会い、どんどんのめりこんでいくにつれ、映画から状況を説明するところや人間の映像が消えていき、最後は馬の視線だけになってしまうところが秀逸でした。

 天災と人災に翻弄される馬たちは、放射能によって畜殺される運命はのがれたものの、一生、警戒区域内を出られなくなります。まさに"禍福はあざなえる縄のごとし"という諺そのもの。この哀れな馬たちの姿には福島の人々の運命が投影されているはずです。

 この作品の最後に、ウィグルの民族音楽の"山水"という曲が流れるのですが、監督によれば、十数年前にウィグルを旅したときにずっと聞いていた曲で、ウィグルといえば中国が核実験場に使っているところで、核というと連想するのだそうです。相馬もまた民謡のふるさととして知られていますが、歌に歌われた美しい自然が今どうなったかを考えると、核のために故郷を失ったウィグルの人々と福島の人々の運命の皮肉に胸が痛くなる思いがしました。

 写真は上映後のQ&Aの様子で、左から市山尚三ディレクター、松林要樹監督、通訳を務めた山形ドキュメンタリー映画祭の藤岡朝子ディレクター。松林監督と藤岡さんはアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭から帰国したばかりだそうです。

 『祭の馬』は12月14日から東京・シアター・イメージフォーラムでロードショーされる他、全国で順次公開されます。

(齋藤敦子)