シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(4)即興演技、流れる時間そのままに/「FORMA」が国際映画批評家連盟賞

2014/02/17

2014berlin_p_04_01.jpg 14日夕、コンペ部門以外の賞から発表が始まり、坂本あゆみ監督の『FORMA』が国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI)を受賞しました。坂本監督にとっては昨年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュ賞に続く受賞です。

 フォーラム部門で上映された『FORMA』は、街角で再会した高校時代の友人2人の関係が思いがけない方向へ発展していく、というストーリーは一応あるのですが、俳優には場面の設定と鍵となる言葉を与えただけで、ほぼ即興で演技をさせ、カメラの前に展開する生々しい時間を記録した、非常に先鋭的な作品でした。2時間25分という長さを、「観客に媚びずに作ろうと思った結果、1フレームも切るつもりはない」と言い切る坂本監督は、頑固で頼もしい新人です。

2014berlin_p_04_02.jpg 同14日夜にはコンペ部門の最後を飾って、山田洋次監督の『小さいおうち』の正式上映がありました。この作品は現在公開中なので、ご覧になった方も多いと思います。原作は中島京子氏の直木賞受賞作で、戦前、山形から東京の玩具会社の重役の家に奉公に来た女中(過去が黒木華、現在が倍賞千恵子)の目を通して、若奥様(松たか子)の不倫を描いた作品。山田洋次監督が"書店で本を買い、読んですぐ映画化しようと思った"ほど、惚れ込んだ小説です。記者会見で監督は映画化の意図を「自分は戦争中の生活を知っている最後の世代で、それを今の人に伝えたいと思った」と言い、「現代の日本には世代間のギャップがある。今の日本の指導者は戦争を知らない世代で、悲劇的な戦争の教訓を学んで生きているのか、不安でならない」と語っていました。

 15日夜の授賞式でコンペ部門の賞が発表になり、主演の黒木華さんが女優賞を受賞しました。この賞は山田洋次監督の演出を含めた作品全体が評価された結果だと思います。

 写真上は12日夜、『FORMA』上映後のQ&Aの模様で、右から坂本あゆみ監督、主演の梅野渚さん、松岡恵望子さん。
 写真下は14日夕、『小さいおうち』のプレス上映後に開かれた記者会見での山田洋次監督と黒木華さんです。

(齋藤敦子)