シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(1)目立つ伝記作品/開幕は「グレース・オブ・モナコ」

2014/05/15

cannes_p2014_01_01.jpg 第67回カンヌ国際映画祭が、5月14日夜、フランスのオリヴィエ・ダアン監督の『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』の上映から開幕しました。今年は最終日にあたる25日に欧州議会選挙が行われるため、授賞式が24日の土曜に繰り上がり、例年より1日短い11日の会期となります。

cannes_p2014_01_02.jpg 『グレース・オブ・モナコ』は、ハリウッドのスター女優だったグレース・ケリーが、モナコ公国のレーニエ大公と結婚、芸能界を引退した後、ヒッチコック監督から新作への出演を依頼され、公妃としての立場と自分のアイデンティティーとの間で悩みつつ、公妃として成長していく姿を描いた作品です。

出演はグレース・ケリーにニコール・キッドマン、レーニエ大公にティム・ロス、グレースの相談役となる神父にフランク・ランンジェラ。ダアン監督はシャンソン歌手のエディット・ピアフを描いた『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』でアカデミー賞を2部門受賞した人でもあります。

 モナコ公国はカンヌと同じコートダジュールにあり、多くの映画に登場する有名なカジノや、F1グランプリで有名。カンヌとは距離的にとても近いのですが、映画の描き方が事実に反すると抗議し、グレース・ケリーの長男で現大公のアルベール2世を始め、グリマルディ家の関係者は一人も会場に現れませんでした。これは事実をドラマ化する際の宿命でしょう。

 『グレース・オブ・モナコ』はコンペ作品ではありませんが、今年のラインナップを見ると、伝記映画が多く目につきます。たとえば、天才的なファッションデザイナー、イヴ・サンローランを描くベルトラン・ボネロ監督の『サンローラン』、84年のロサンゼルス・オリンピックで、兄弟で金メダリストになったレスリングのシュルツ兄弟を描くベネット・ミラー監督の『フォックスキャッチャー』、イギリスの風景画家ターナーを主人公にしたマイク・リー監督の『ミスター・ターナー』、1930年代のアイルランドを舞台に、左翼の活動家ジェームズ・グラルトンとカトリック教会の対立を描いたケン・ローチの『ジミーズ・ホール』などです。

 フランスの全国紙<ルモンド>のカンヌ特集は、第一次大戦勃発から100年、第二次大戦を終結に導いた連合軍のノルマンディー上陸から70年に当たる今年の映画祭を"闘い"という切り口で評論しています。たしかに様々な部門で、ボスニア、湾岸、チェチェン、そして今も緊張が続くウクライナなど、フクション・ドキュメンタリーを問わず、様々な"闘い"を扱った映画がラインナップされているようです。

 今年の審査員長は『ピアノ・レッスン』で女性初のパルム・ドールを受賞したジェーン・カンピオン。カンピオンは北野武の『HANA-BI』がヴェネツィアで金獅子賞を受賞したときの審査員長でもあります。さて、どんな結果になるのか期待しながら、今年も映画祭を楽しみたいと思います。

 写真(上)は14日午後に開かれた『グレース・オブ・モナコ』の記者会見の模様で、主演のニコール・キッドマンとオリヴィエ・ダアン監督。

 写真(下)は続いて開かれた審査員の記者会見の模様で、左からジャ・ジャンクー監督(中国)、キャロル・ブーケ(フランス)、ウィレム・デフォー(アメリカ)、審査員長のジェーン・カンピオン監督(ニュージーランド)、ニコラス・ウィンディング・レフン監督(デンマーク)です。

(齋藤敦子)