シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(6)日本映画に新たな地平/平柳敦子監督の「オー、ルーシー!」、早川千絵監督の「ナイアガラ」

2014/05/24

cannes_2014_p06_01.jpg 20日火曜日の午後、コンペ部門にエントリーした河瀨直美監督の『2つ目の窓』の公式上映があり、その前に記者会見が開かれました。写真はそのときの模様で、左から村上淳さん、吉永淳さん、河瀨直美監督、村上虹郎さん、松田美由紀さん、渡辺真起子さんです。

 今回の舞台は奄美大島。島の高校生界人(村上虹郎)と杏子(吉永淳)の成長を、奄美の大自然、周囲の大人たちとの複雑な関係を絡めて描いています。上映後の反応もよく、海外の何人ものプレスから"良かった"という言葉をかけてもらいました。

 今年は例年より1日少ないため、中盤から終盤にかけて、かなり慌ただしいスケジュールになっています。映画学校の学生の作品を対象にしたシネフォンダシオンの上映が21日から22日にかけて行われ、日本人女性監督の2作品が上映されました。

cannes_2014_p06_02.jpg 平柳敦子監督の『オー、ルーシー!』は、55歳の独身お局OLが、風変わりな英語教師から金髪のかつらとルーシーという人格を与えられたことで今まで隠れていた欲望が表面に出て来て...という面白い作品。平柳さんはニューヨーク大学ティッシュ・スクール シンガポール校に学ぶ38歳。ロサンゼルスに留学し、俳優を志すも、最終目的の監督になるために、家族でシンガポールに引っ越したというバイタリティの持ち主です。2011年に東京フィルメックスが主催するタレント・キャンパス・トーキョーでプロデューサーの曽我満寿美さんと知り合い、プロジェクトがスタートしたとのこと。『オー、ルーシー!』は卒業制作で、最初から想定していたという桃井かおりさんに直接アタックして出演交渉、撮影中は二人目のお子さんを妊娠中だったそうで、細身の体いっぱいにパワーが詰まった頼もしい新人です。

 早川千絵監督の『ナイアガラ』は、幼い頃に両親を亡くして施設で育った主人公が、死刑囚の祖父の存在を知り、認知症の祖母を介護する青年と、塀の中の祖父へ外の音を送ろうとするというもの。死刑制度反対を声高に主張するのでなく、映画的に表現したいと思って出来た作品だそうです。

 早川さんは小学生のときに小栗康平監督の『泥の河』を見て感動し、映画監督になりたくてアメリカに留学、いったんは挫折したものの、帰国後、どうしても映画が作りたい、"やらないと死ねない"というほどの強い思いで、仕事をしながらENBUゼミナールの夜間コースに通ったという根性の人。平柳監督同様、2児の母でもあります。

 日本映画は今、転換期を迎えており、劇場で公開される、いわゆる商業映画とは別の草の根的な地平に新しい才能がどんどん育っているように思います。平柳さん、早川さんの頼もしいお話をうかがうと、日本映画の未来に希望が持てる気がして、こちらも元気になりました。

 写真下は左から平柳敦子監督、桃井かおりさん、早川千絵監督です。

 22日夕、シネフォンダシオン部門の授賞式が行われ、平柳敦子監督の『オー、ルーシー!』が見事2位になり、賞金1万1250ユーロが授与されました。ちなみに1位のアメリカ映画『スカンク』を撮ったアニー・シルヴァースタインさんも36歳の女性監督です。

(齋藤敦子)