シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(8・完)ジェイラン監督の「冬の眠り」がパルムを獲得/グランプリに「ワンダーズ」

2014/05/26

cannes_2014_p08_01.jpg 24日夜、主会場のリュミエールで授賞式が行われました。賞の発表に入る前に、長年映画祭を牽引してきたプレジデントのジル・ジャコブ氏が今回限りで引退されるための挨拶があり、会場全体がスタンディングオヴェーションで氏の貢献に拍手を贈りました。

 受賞結果は以下の通りです。前評価の高かったヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『冬の眠り』が見事パルムを獲得、トルコ映画生誕百年の記念の年に華を添えました。2011年に『昔々アナトリアで』でグランプリを受賞したときはどことなく不満顔だった監督も、今
回は"1等と2等では(喜びが)全然違う"と満面の笑みでした。

 グランプリを獲得したアリーチェ・ロルヴァケル監督の『ワンダーズ』は、イタリアの寒村に住み着き、養蜂をしながら自給自足で暮らす家族の、怒ってばかりいて経済観念のないドイツ人の父親と、しっかり者の長女の関係を描います。撮影はすべて手持ちカメラで、まるで家族の中に入り込んだような親密さと、子供達の自然な表情をとらえた演出が素晴らしい、個性的な作品でした。

 審査員賞のグザヴィエ・ドラン監督は、2009年に監督デビュー作の『マイ・マザー』を監督週間に出品し、3賞を独占して"恐るべき子供"と言われた天才少年。翌年2作目の『胸

cannes_2014_p08_02.jpg

騒ぎの恋人』をある視点部門に出品し、若い視点賞を受賞、4作目の『トム・アット・ザ・ファーム』を昨年ヴェネツィア映画祭のコンペに出品し、国際映画批評家連盟賞受賞と、着実にキャリアの階段を昇ってきたところ。カンヌのコンペ出品には特別な思いがあったようで、秘かに狙っていたパルムが獲れなくてがっかりしていましたが、25歳で5本の長編監督作品とこれだけの受賞歴があれば立派なもの。前途洋々の期待の星です。

 今年の驚きは、25歳のグザヴィエ・ドラン監督と83歳のジャン=リュック・ゴダール監督が同じ審査員賞を分け合ったことでしょう。その『言語よ さらば』は3Dという映像表現に、従来にない、まったく新しい視点を持ち込んだ、とびきり面白い作品でした。今年3月に91歳で亡くなったアラン・レネ監督が、2月のベルリン映画祭に出品した遺作『愛し、飲み、歌い』で、若手監督に授与されるアルフレッド・バウワー賞を受賞したことを思うと、実年齢は精神の若さや創作力とはまったく関係がないのだなと思います。ゴダール監督は今年もカンヌに現れず、彼のウィットに富んだ知的な記者会見を楽しみにしていたので、とても残念でした。
 写真(上)はパルム・ドール 『冬の眠り』のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督

 写真(下)はグランプリ 『ワンダーズ』のアリーチェ・ロルヴァケル監督


【受賞結果】
●コンペティション部門
パルム・ドール:『冬の眠り』監督ヌリ・ビルゲ・ジェイラン(トルコ)
グランプリ:『ワンダーズ』監督アリーチェ・ロルヴァケル(イタリア)
監督賞:ベネット・ミラー『フォックスキャッチャー』(アメリカ)
審査員賞:『マミー』監督グザヴィエ・ドラン(カナダ)
     『言語よ さらば』監督ジャン=リュック・ゴダール(スイス)
脚本賞:アンドレイ・ズビヤギンツェフ、オレグ・ネギン
    『リヴァイアサン』監督アンドレイ・ズビヤギンツェフ(ロシア)
女優賞:ジュリアン・ムーア
    『スターへの地図』監督デヴィッド・クローネンバーグ(カナダ)
男優賞:ティモシー・スポール
    『ミスター・ターナー』監督マイク・リー(イギリス)

●短編コンペティション部門
パルム・ドール:『レイディ』監督シモン・メサ・ソト(コロンビア)
次点:『アイッサ』クレマン・トレイン=ラランヌ(フランス)
  『イエス・ウィー・ラヴ』ハルヴァー・ヴィッソ(ノルウェー)

●ある視点部門
ある視点賞:『白い神』監督コルネル・ムンドルーチョ(ハンガリー)
審査員賞:『ツーリスト』監督ルーベン・オストルンド(スウェーデン)
特別賞:『地の塩』監督ヴィム・ヴェンダース、フリアノ・リベイロ・サルガド
アンサンブル賞:『パーティ・ガール』監督マリー・アマシュケリ、クレール・ビュルジェ、サミュエル・テス(フランス)
俳優賞:デヴィッド・グルピリル『チャーリーズ・カントリー』監督ロルフ・デ・ヒーア(オーストラリア)

●カメラドール(新人監督賞)
『パーティ・ガール』監督マリー・アマシュケリ、クレール・ビュルジェ、サミュエル・テス(フランス)

●シネフォンダシオン部門
1位:『スカンク』監督アニー・シルヴァースタイン(アメリカ)
2位:『オー、ルーシー!』監督 平柳敦子(日本)
3位:『サワードウ』監督フルヴィオ・リスレオ(イタリア)
   『大きな画』監督デイジー・ジェイコブス(イギリス)

●国際映画批評家連盟賞
コンペティション部門:『冬の眠り』監督ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
ある視点部門:『ハウハ』監督リサンドロ・アロンソ(アルゼンチン)
監督週間・批評家週間部門:『闘う人たち(一目惚れ)』監督トマ・ケレー(フランス)

●エキュメニック賞
『ティンブクトゥ』監督アブデラマン・シサコ

cannes_2014_p08_03.jpg監督賞 『フォックスキャッチャー』のベネット・ミラー監督

cannes_2014_p08_04.jpg審査員賞 『マミー』のグザヴィエ・ドラン監督

cannes_2014_p08_05.jpg

脚本賞 『リヴァイアサン』のアンドレイ・ズビヤギンツェフ監督

 

cannes_2014_p08_06.jpg

男優賞 『ミスター・ターナー』のティモシー・スポール

cannes_2014_p08_07.jpg

短編コンペ部門 左からパルム・ドール『レィディ』シモン・メサ・ソト監督。次点『アイッサ』のクレマン・トレイン=ラランヌ監督、『イエス・ウィー・ラヴ』のハルヴァー・ウィッソ監督

cannes_2014_p08_08.jpg

カメラ・ドール 『パーティ・ガール』の3人の共同監督。左からマリー・アマシュケリ、クレール・ビュルジェ、サミュエル・テス

(齋藤敦子)