シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)新たな才能の発掘が国際化への道

2014/10/29

p2014_tokyo_03_01.jpg 10月23日から第27回東京国際映画祭が開幕しました。当日は朝から小雨模様のあいにくの天気でしたが、オープニングの頃にはあがって、嵐を始めとする人気スターがレッドカーペットを歩き、開幕を盛り上げました。

【写真】小雨模様の開幕日

 昨年トップが変わったことで様々な変化があったなかで、エコロジーをテーマにした<natural TIFF>部門がなくなったことはお伝えしましたが、今年は、かろうじて残っていたグリーンカーペットも消え、エコロジーが映画祭のコンセプトから完全に消滅したのは、フクシマ後わずか3年で早くも原発の再稼働を進める現政権の意向を反映したものなのかと、うがった見方をしてみたくなりました。

 矢田部・石坂両プログラミング・ディレクターのインタビューの中でも触れていますが、今年は主会場である六本木ヒルズのTOHOシネマズの他に、TOHOシネマズ日本橋に上映会場が増えたり、『新世紀エヴァンゲリオン』などで有名な監督・アニメーターの庵野秀明の特集、また、"比類のない創造性を持ち、新しい映像表演を切り開いてきた映画人の功績をたたえる"SAMURAI(サムライ)賞が新設され、第1回の受賞者に北野武監督とティム・バートン監督が選ばれたり、歌舞伎座スペシャルナイトと題されたイベントで市川染五郎の舞踊とチャップリンの「街の灯」の上映があったり、特別提携企画としてニューヨーク近代美術館映画コレクション特集が京橋のフィルム・センターで開催されたりと、寂しかった昨年に比べ、バブルの頃を思わせる賑やかな映画祭になりました。

 とはいえ、映画祭の華はレッドカーペットやイベントではなく、上映される映画にあるのはもちろんで、<コンペティション>と<アジアの未来>の2つのコンペ部門の内容をいかに充実させていくかが、今後も東京国際映画祭の課題であることは言うまでもありません。

p2014_tokyo_03_02.jpg 【写真】復活した関係者用のラウンジ

 今年2年目に入った<アジアの未来>は、昨年の8本から2本増えて10本になりました。まだ2回目なので、目的である新人発掘の成果があがるのは、これからですが、石坂ディレクターのインタビューにもあるように、昨年の受賞作2本が海外の多くの映画祭でピックアップされたことで、東京の名前を知らせる役を果たしてくれたように思います。今年は審査員にトロント映画祭のキャメロン・ベイリーが加わったことで、<アジアの未来>で上映される映画に国際的な注目が集まりやすくなった気がします。たとえば、ナント三大陸映画祭が侯孝賢やジャ・ジャンクー、是枝裕和らにいち早くグランプリを授与したことで有名になったように、映画祭がどんな才能を発見したかでなく、発見された才能が映画祭の名を上げ、クオリティを保証してくれるのです。<アジアの未来>がどんな才能を発掘できるか。東京映画祭の真の国際化は、案外この辺りから始まるような気がしています。

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【写真】朝の会場風景。主会場のTOHOシネマズは奥の階段を上がるのだが、

来たことのない人には非常にわかりにくい。

(齋藤敦子)