シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(4完)全編NYロケで若者描く/グランプリ「神様なんかくそくらえ」

2014/11/01

tokyo2014_p_04_01.jpg 10月31日の夜、授賞式が行われ、以下のような受賞作が決定しました。

 最高賞の東京グランプリ(今年から名称変更)を受賞した『神様なんかくそくらえ』は、主演のアリエル・ホームズの実体験を元にした作品。全編ニューヨーク・ロケで、ドラッグを買うために物乞いと万引きを繰り返しながら、刹那的に生きる若者達の生態が、非常にリアルに、痛々しく描かれています。監督のサフディ兄弟は30歳と28歳で、対象となったストリートで生きる青少年たちとさほど年齢の差がなく、彼らの心情に寄り添うように撮っているところが映画の魅力になっていました。

写真は10月28日に行われた記者会見。左からジョシュア、ベニー・サフディ兄弟監督、原作・主演のアリエル・ホームズ、共演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。

 審査員特別賞の『ザ・レッスン/授業の代償』は、小学校の英語教師が、夫の作った借金のために抜き差しならない状況に追い込まれていく姿を描いたもの。『紙の月』は河北新報にも連載された角田光代の同名小説を原作に、夫がありながら、年下の恋人に貢ぐために顧客の預金を横領し、次第に深みにはまっていく銀行員を宮沢りえが演じています。男優賞の『マイティ・エンジェル』は、重度のアルコール依存症で、リハビリ施設を出たり入ったりする作家の刹那的な生き方を描いたもの。『草原の実験』は、カザフスタンの広々とした草原にぽつんと建つ一軒家を舞台に、父親と美しい娘、娘を好きな2人の青年とのおだやかな暮らしが、唐突におわりを迎えるまでを描いたものです。

 今年のコンペティションのテーマは"追いつめられる人々"だと言われていました。たしかに受賞作を見ると、『草原の実験』を除けば、ドラッグ、アルコール、金のせいで深みにはまり、追い詰められていく人々を主人公にしたものばかり。加えて、私見ですが、インディーズ系で、まとまりのいい映画が評価されたように思います。これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジェームズ・ガン、『キューティ・ブロンド』のロバート・ルケティックという2人のアメリカ人監督が審査員にいたことが影響したように思いました。

 残念だったのは、マレーシアのエドモンド・ヨウの長編デビュー作『破裂するドリアンの河の記憶』が無冠に終わったことです。一人の高校生を主人公に、歴史の女教師に率いられた工場反対運動が次第に先鋭化する姿をマレーシアの歴史と現状を交えた、野心的な作品で、多くの要素が含まれ、多様な見方が出来るのを私は面白いと思ったのですが、まとまりを重視する今年の審査員には評価されなかったようです。また、『1001グラム』、『マルセイユ・コネクション』といった、出来はよくても商業的な作品や、すでに名のある人の作品は賞から外されたようで、この辺は映画祭というものをよく知る、クレバーな選択だったと思います。

tokyo2014_p04_00.jpg●受賞結果

*写真(左)は記念撮影する受賞者たち

<コンペティション>
東京グランプリ:『神様なんかくそくらえ』
        監督ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ(アメリカ)
審査員特別賞:『ザ・レッスン/授業の代償』
       監督クリスティナ・グロゼヴァ、ペタル・ヴァルチャノフ(ブルガリア)
監督賞:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ『神様なんかくそくらえ』
女優賞:宮沢りえ『紙の月』監督 吉田大八(日本)
男優賞:ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ『マイティ・エンジェル』
    監督ヴォイティ・スマルゾフスキ(ハンガリー)
芸術貢献賞:『草原の実験』監督アレクサンドル・コット(ロシア)
観客賞:『紙の月』
WOWOW賞:『草原の実験』

<アジアの未来>
作品賞:『ゼロ地帯の子供たち』監督アミールフセイン・アシュガリ(イラン)
国際交流基金特別賞:『遺されたフィルム』監督ソト・クォーリーカー(カンボジア)

<日本映画スプラッシュ>
作品賞:『百円の恋』監督 武正晴
スペシャル・メンション:『滝を見に行く』監督 沖田修一

(齋藤敦子)