シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(1)熱帯の緑、血の赤・・/戦争の悲惨さ描く塚本監督の「野火」

2014/11/23

tokyo_fil_p_2014_0101.jpg 11月22日夕、第15回東京フィルメックスが開幕しました。これから30日までの9日間、林加奈子ディレクターが胸を張る"厳選の25本"が、メイン会場の有楽町の朝日ホールとTOHOシネマズ日劇、ヒューマントラストシネマ有楽町で上映されます。

 オープニング作品は、今年の9月にヴェネツィア映画祭コンペティション部門でワールド・プレミア上映された塚本晋也監督の『野火』で、今回の上映がジャパン・プレミア。原作は大岡昇平の小説<野火>で、大岡自身のフィリピンでの戦争体験を基に、飢えにさいなまれながら敗走する兵士の孤独と生への執着をテーマにしたもの。

    tokyo_fil_p_2014_0102.jpg            

 1959年に市川崑が船越英二主演で映画化していますが、当時はまだ戦争の記憶があらわに残っていたため、モノクロ映像を使うなど、わざと残虐さを弱める配慮がなされていましたが、今回の映画化は逆に、熱帯の緑、血の赤、死体の黒など原色を強調したリアルな映像で、戦争の悲惨さ、残酷さを目に焼き付けています。20年前から映画化を願っていたという塚本晋也監督は、「多くの人に見てもらいたいので有名な俳優に主役を演じてもらいたかったが、こういう映画が作りずらい状況になってきたので、自分とカメラ1台から始め、1人1人協力者を集めていった。暴力シーンがポイントで出て来るので、げんなりされると思うが、本当に戦争が始まればこんなことではすまない。"戦争は映画の中でたくさん"という気持ちを込めて作った」と語っていました。

tokyo_fil_p_2014_0103.jpg 『野火』は来年7月25日より、東京・渋谷ユーロスペース他で全国公開されます。

【写真・上】開会宣言する林加奈子ディレクター
【写真・中】来日が間に合わず、ビデオで挨拶する今年の審査員長ジャ・ジャンクー監督
【写真・下】『野火』の舞台挨拶の模様で、右から音楽担当の石川忠、出演のリリー・フランキー、森優作、監督・主演の塚本晋也の各氏

(齋藤敦子)