シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)教会の暗部に迫る/ラライン監督の「ザ・クラブ」

2015/02/12

2015berlin_p_02_01.jpg 映画祭が中盤に入り、ここまでで評判のよい作品は、監督自身が運転手に扮し、タクシーに乗り込んでくる人々の悲喜こもごもを描いたジャファール・パナヒの『タクシー』、結婚45周年を前に、元恋人の遺体が氷河の中から発見され、心が揺れ動く夫を見て、人生の意味を考え直す妻を描いたアンドリュー・ヘイの『45年』ですが、加えて中南米の映画3本もそれぞれ面白く見ました。

 グアテマラの『イクスカヌル火山』は、火山の下でコーヒー豆を栽培して暮らしているマヤ族の娘が主人公。両親は財産のある男と結婚させようとするのですが、外の世界を知りたい娘は、村を出るという青年と付き合って妊娠してしまい、思いがけない形で願望が実現する、という物語。監督のハイロ・ブスタマンテはグアテマラ生まれの38歳。パリとローマで映画を学び、故郷を舞台にした映画で長編デビューを飾りました。

 チリのパトリシオ・グスマン監督の『真珠貝のボタン』は、白人の入植者に住む場所を奪われ、絶滅に追い込まれた先住民と、ピノチェト政権によって逮捕、拷問され、海に捨てられた1200人から1400人(正確な人数は不明)の犠牲者を、生命の源である水を切り口にして描いたドキュメンタリー。題名は、文明国イギリスへ連れていかれた先住民の少年の代償に使われたボタンと、海底から発見された軍事政権の犠牲者が身につけていたボタンから取られています。アタカマ砂漠に散ったピノチェト政権の犠牲者の骨を探す人々を描いた前作『光、ノスタルジア』の言わば続編的な作品でした。

 同じくチリの『ザ・クラブ』は、同性愛や子供の性的虐待で追放された司祭たちが暮らす施設を舞台に、新たな入居者が起こした波紋を描いた作品で、教会の暗部に切り込んだ問題作です。監督はピノチェト政権が崩壊するきっかけを作った国民投票キャンペーンを描いた『NO』でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたパブロ・ラライン。題材が題材だけに好き嫌いの別れる作品でしたが、私は画面から発散される異様な迫力に圧倒されました。写真は記者会見の模様で、右から2人目がラライン監督です。

(齋藤敦子)