シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)日本的メロドラマの系譜継ぐ/是枝裕和監督の「海街diary」

2015/05/17

2015cannus_p_02_01.jpg 14日朝から本格的に映画祭が始まりました。上映のトップバッターはコンペ外招待作品の『マッドマックス、怒りのデスロード』ですが、コンペ部門は是枝裕和監督の『海街diary』、ある視点部門のオープニングは河瀨直美監督の『あん』と、奇しくも公式部門は日本映画2本がトップを飾ることになりました。

 『海街diary』は吉田秋生の同名マンガの映画化。鎌倉の古い一軒家に住む3姉妹が、幼い頃に家を出た父親が死に、遺児となった4人目の妹を引き取って暮らすことになるというストーリー。4姉妹をめぐる物語と言えば、谷崎潤一郎の<細雪>や向田邦子の<阿修羅のごとく>を思い出しますが、『海街diary』も性格の違う妙齢の美しい姉妹を通して、その時代の雰囲気を描き出すという日本的メロドラマの伝統の延長上にある作品と言えるでしょう。過去に海外の映画批評家から成瀬巳喜男や小津安二郎の影響を指摘されてきた是枝監督は、記者会見で「今回の作品は、人間ドラマというより、もう少し広い視野で、人間をとりまいて流れている時間が、過ぎ去っていくのでなくて積み重なっていく感じが小津的だなと思ったので、何本かの小津作品を参考に見たりしました」と正直に告白していました。

2015cannus_p_02_02.jpg 『あん』は河瀨直美監督初のオリジナルではない翻案作品。原作はドリアン助川の同名小説で、『朱花の月』に出演したのがきっかけで知り合ったドリアンさんからの依頼で映画化することになったとのこと。過去に不祥事を起こし、今は小さなどら焼き屋の雇われ店長をしている男(永瀬正敏)が、餡作りの名人の老女(樹木希林)を雇うことになって、店は大繁盛するものの、やがて老女の隠された過去が明らかになり...というストーリー。後半、テーマが明らかになるにつれ、メッセージ性が強くなりがちなところを、抑え気味に描いているところに好感を持ちました。

 写真(上)は「海街diary」の記者会見。左から綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、是枝裕和監督

 写真(下)は、「あん」の記者会見。左から河瀨直美監督、樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、ドリアン助川

(齋藤敦子)