シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(4)コンペ部門に7本/トップ交代の影響か?「フランス優遇」の見方も

2015/05/20

2015cannus_p_04_01.jpg 今年は、長年映画祭を牽引してきたジル・ジャコブが勇退し、有料TV局カナル・プリュスの創設者で現社長のピエール・レスキュールがプレジデントを務める最初の年であり、これからのカンヌがどこへ向かうのかを占う大事な年となりました。

 4月にパリで開かれた記者会見で今年のラインナップが発表されたとき、最も目を引いたのはフランス映画の多さでした。今までは多くても4本だったのに今年は何と5本。例年20本あまりのコンペ作品が今年は19本と少ないにもかかわらず、です。そのうえ、遅れて発表されたオープニング作品とクロージング作品もフランス映画だったので、コンペ部門はコンペ外招待作品を含め、7本ものフランス映画が占めることになりました。これは、よほどフランス映画の出来がよかったのか、それとも他に理由があるのか、どちらなのだろうと思っていたら、5月14日付の<ル・モンド>紙に気になる記事が載っていました。

 "スポンサーのためのレッドカーペット"と題されたその記事には、今年から新たにオフィシャル・スポンサーに加わったケリング社(グッチやサン・ローランを保有するフランスの大手ファッション宝飾企業)が始めた<ウーマン・イン・モーション>という映画産業で働く女性を支援するプログラムのこと、クロージング作品はケリング社が共同製作に加わった『氷と空』というドキュメンタリー作品であること、ケリング社のCEOフランソワ=アンリ・ピノー夫人のサルマ・ハエックが主演したマッテオ・ガローネの『物語の中の物語』がコンペに選ばれていること、また、オフィシャル・スポンサーとしてパルム・ドールのトロフィーを作っているショパールが共同製作したドキュメンタリー『パルム・ドールの伝説』がカンヌ・クラシック部門で上映されることなどを挙げ、スポンサーが関わる作品を優遇しているのではないかと疑問を投げかける内容でした。ちなみに、今年のコンペ部門の女性監督作品は2本で、2本ともフランス映画です。

 どこの映画祭も資金不足で、気前のいいスポンサーは喉から手が出るほど欲しいのは確か。スポンサーにいい顔をするために映画祭の自由が制限されるとなれば問題ですが、この程度の配慮は許容範囲とみなすべきなのかどうなのか。その答えはカンヌがどんな映画を見せようとしているのか。その選ばれた映画の中にあるはずです。

写真は、開幕を数時間後に控えた主会場リュミエール前の模様。

(齋藤敦子)