シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(5)完成度高い「キャロル」/完璧なケイト・ブランシェット

2015/05/20

2015cannus_p_05_01.jpg 4月に発表になったラインアップを見て、私が本命になるだろうと予想したのはトッド・ヘインズの『キャロル』でしたが、実際に映画を見てみたら、期待以上の素晴らしい作品でした。

 『キャロル』は、『太陽がいっぱい』の原作者として有名なミステリー作家パトリシア・ハイスミスが初期に書いた小説。1950年代のニューヨークを舞台に、結婚生活が破綻し、夫と離婚調停中の裕福な女性と、デパートの売り子として働く娘の恋愛を描いたもので、タイトルロールのキャロルをケイト・ブランシェット、彼女に惹かれていく娘テレサをルーニー・マーラが演じています。

 監督のトッド・ヘインズには、『ベルベット・ゴールドマイン』や、『アイム・ノット・ゼア』のような音楽をテーマにした作品と、『エデンより彼方に』や『ミルドレッド・ピアース』のような女性を主人公にしたメロドラマの作品があり、『キャロル』はまさに後者の路線にある作品。2002年にヴェネツィア映画祭監督賞を受賞したジュリアン・ムーア主演の『エデンより彼方に』や、ケイト・ウィンスレット主演でジョーン・クロフォードの『深夜の銃声』をリメイクしたTVミニシリーズ『ミルドレッド・ピアース』を上回る完成度で、特にウッディ・アレンの『ブルー・ジャスミン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したケイト・ブランシェットの演技と美しさは完璧の一言でした。

 メロドラマといえば、監督週間のオープニング作品として上映されたフィリップ・ガレルの『女たちの影』も、ガレルらしい、とても面白い作品でした。今回のテーマはクラシックな三角関係。主人公はレジスタンスのドキュメンタリーを撮って監督になろうとしているピエールと彼を献身的に支える妻のマノン。二人は貧しく、アルバイトをしながら少しずつ撮影を続けているのですが、ピエールに若い愛人エリザベットができて、互いを傷つけあうというお馴染みの関係に陥ります。妻も愛人も自分のものにしておきたい身勝手な夫と、夫から辛くあたられるのをじっと耐える妻という典型的なメロドラマで、台詞も昼メロかと思うほど臭いのですが、クリシェを逆手にとって普遍的な愛の映画に仕立てたガレルの手腕と、名匠レナート・ベルタの美しいモノクローム撮影を堪能しました。

 写真は、監督週間のスクリーン。

(齋藤敦子)