シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(7)中国の未来を透視/ジャ・ジャンクー監督の「山河故人」

2015/05/23

2015cannus_p_07_01.jpg 今年のコンペ部門には中国映画界を代表する監督の力作が2本並びました。1本は2年前に『罪の手ざわり』で脚本賞を受賞したジャ・ジャンクーの『山河故人』で、1人の女性と彼女を愛する2人の男性の運命を、1999年、2014年、2025年に渡って描いた作品。1999年と2014年のエピソードは監督の故郷でもある山西省汾陽(フェンヤン)が舞台ですが、2025年のエピソードでオーストラリアへ移住、祖国と母国語を失い、ノマド(放浪の民)化した中国人の姿が描かれています。前作の『罪の手ざわり』が4つの異なる事件から現代の中国社会を俯瞰した作品とするなら、今回の『山河故人』は同じ登場人物の人生を追うことで中国の未来の姿を透視しようとした作品と言えるでしょう。

2015cannus_p_07_02.jpg もう1本は、台湾の名匠侯孝賢の10年ぶりの長編『黒衣の刺客』。唐代に書かれた伝奇小説<聶陰娘>を映画化した武侠映画で、暗殺者集団に幼い頃に誘拐され、刺客として育てられた娘(スー・チー)が、許婚だった男(チャン・チェン)を殺すように命じられるという非情な運命を描いた作品。ヒロインを助ける遣唐使役で日本から妻夫木聡が出演しています。

 唐時代を思わせる建物や風景を探して日本でもロケしていたので、映画のことは知っていたのですが、その後、凝り性の侯監督だけに編集に時間がかかり、6年がかりでやっと完成、今回カンヌでお披露目となったもの。出来上がった作品は、香港カンフー映画のような派手なアクション映画とはまったく違う、日本の時代劇を参考に侯監督が考案したという静の殺陣と、名撮影監督李屏賓による美しい映像で、今まで誰も見たことのない、まるで美術作品のような武侠映画になっていました。

 写真(上)は「山河故人」記者会見でのジャ・ジャンクー監督とヒロイン役のチャオ・タオさん。ジャ監督は今年<黄金の馬車>賞を受賞し、監督週間で授賞式と「プラットフォーム」の記念上映が行われました。

 写真(下)は「黒衣の刺客」記者会見。左からスー・チーさん、侯孝賢監督、チャン・チェンさん。二人は侯監督の前作「百年恋歌」でも恋人同士を演じています。

(齋藤敦子)