シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)グランプリはブラジル精神科医師を描いた「ニーゼ」/コンペティション部門

2015/11/02

tokyo2015_p_03.jpg 10月31日に閉会式が行われ、以下のような受賞作が決定しました。

 東京グランプリと最優秀女優賞の「ニーゼ」は、保守的で旧態依然としたブラジルの精神療養界に革新をもたらした実在の精神科医ニーゼ・ダ・シルヴェイラの半生を映画化したもの。監督のホベルト・ベリネールはドキュメンタリー出身で、劇映画は2作目。審査員特別賞の「スリー・オブ・アス」は、フランスのスタンダップ・コメディアンのケイロンが、王制時代から反体制運動に身を投じ、宗教革命後のイランからフランスへ亡命し、今度はパリ郊外で住民のために闘った父の半生を自身の主演でコメディタッチに映画化したもの。

 監督賞の「カランダールの雪」は、トルコの寒村を舞台に、地道に働いて借金を返すよう望む妻を尻目に、一攫千金を狙い、鉱脈を当てようとするも失敗し、雄牛を闘牛に出して賞金を稼ごうとする夫を描いたもの。監督のムスタファ・カラもドキュメンタリー出身で劇映画は2作目。男優賞の「地雷と少年兵」は、第二次大戦直後、デンマークの海岸線に埋められた200万個の地雷を除去するという過酷な任務を命じられた戦争捕虜のドイツ軍少年兵と、彼らを監督するデンマーク人軍曹のふれあいを描いたもので、軍曹役のローランド・モラーと少年兵役のルイス・ホフマンが受賞。観客賞の「神様の思し召し」は有能だが傲慢な外科医が、息子が心酔する神父と出会って改心するというコメディ。芸術貢献賞の「家族の映画」、日本公開が決定しているイーサン・ホーク主演の「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」、小栗康平の「FOUJITA」などは未見です。

 今年の審査員はブライアン・シンガーを長として、監督のベント・ハーメル、スサンネ・ビア、トラン・アン・ユン、大森一樹、プロデューサーの施南生(シー・ナンサン)の6人。私が一番好きだったのは、ハオ・ジエが自身の青春を映画化した「ぼくの桃色の夢」でしたが、映画祭の常として、社会的なテーマを持つ作品に賞が集中する結果になり、残念ながら受賞には至りませんでした。また、今年もなぜコンペに選ばれたのか疑問を持つような作品も数本あり、コンペ部門の質の向上に課題を残しました。

 写真は東京グランプリ「ニーゼ」のホベルト・ベリネール監督

【コンペティション部門受賞結果】
東京グランプリ:「ニーゼ」監督ホベルト・ベリネール(ブラジル)
審査員特別賞:「スリー・オブ・アス」監督ケイロン(フランス)
最優秀監督賞:ムスタファ・カラ「カランダールの雪」(トルコ)
最優秀女優賞:グロリア・ピレス「ニーゼ」
最優秀男優賞:ローラン・モラー、ルイス・ホフマン「地雷と少年兵」
       監督マーチン・ピータ・サンフリト(デンマーク)
芸術貢献賞:「家族の映画」監督オルモ・オメルズ(スロベニア)
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観客賞:「神様の思し召し」監督エドアルド・ファルコーネ(イタリア)

(齋藤敦子)