シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(2)家族のあり方問う/黒沢監督の「クリーピー 偽りの隣人」

2016/02/16

2016berlin_p_02_01.jpg 13日の夜、副会場のフリードリヒシュタット・パラストで、ベルリナーレ・スペシャルのオープニングを飾って、黒沢清監督の『クリーピー 偽りの隣人』のワールドプレミア上映が行われました。会場のフリードリヒシュタット・パラストは、戦前のベルリン一の繁華街だったところにあり、"昭和の香りがする"と言いたいくらい、往時の雰囲気をそのまま残した、今では珍しい大劇場です。ヨーロッパの映画ファンにも黒沢清の名前が浸透したのと、土曜の夜ということも手伝って、会場には満員の観客が詰め掛け、黒沢清監督、主演の西島秀俊さん、竹内結子さん、香川照之さんに、惜しみない拍手が贈られました。

 『クリーピー 偽りの隣人』は、日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の小説の映画化で、元刑事で犯罪心理学の教授と妻が、引っ越した家の隣人に恐怖に陥れられるというサスペンス・スリラー。さすがに黒沢清監督だけあって、単なるホラーを超えて、家族の崩壊を描いた『トウキョウソナタ』に通じる、現在の日本社会における家族や社会の繋がりのあり方を問い直すような作品になっていました。『トウキョウソナタ』で失業したことを家族に告げられず、離れていく家族を引き留めようと孤軍奮闘する父親を演じた香川照之さんが、『クリーピー』では、隣家の家族に寄生し、のっとってしまう"偽父親"を演じているのも、黒沢的テーマとの繋がりを感じさせます。

 写真は、ワールドプレミア上映の前に行われた記者会見の模様です。

(齋藤敦子)