シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)ランペドゥーサ島舞台に/ジャンフランコ・ロージ監督の「海の火」

2016/02/17

2016berlin_p_03_01.jpg 映画祭が半分まで終わり、これまでのところコンペで最も評価が高い作品は、イタリアのジャンフランコ・ロージのドキュメンタリー『海の火』です。ロージは、ヴェネツィア映画祭で金獅子賞を獲った『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』が日本公開されているので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

 『海の火』は、シチリア沖に浮かぶランペドゥーサ島を舞台にしたドキュメンタリー。イタリアよりもアフリカ大陸に近い島の地理的関係から、北アフリカから船で脱出した難民が流れ着くところでもあり、映画は彼らを救助する沿岸警備隊の活動と、島で生きる人々の暮らしを交互に描いていきます。ロージは、島での撮影に1年間かけたそうで、警備艇に同乗する許可を得て、隊の人々と一緒に遭難したボートに乗り込み、船底に押し込められて脱水と窒息で瀕死の人々を救助する模様や、バッグに入れられた死体まで生々しく捉えています。映画の救いになっているのは、島の暮らしを描いた部分。特に、学校をサボって遊んでばかりいるサミュエルという12歳のやんちゃな少年が、船酔いを克服しようとしたり、先輩からオールの漕ぎ方を習ったりして、一人前の海の男になろうと奮闘する姿には心が和みました。

 ロージの作品は、2010年の『エル・シカリオ ルーム164』という、メキシコの麻薬マフィアのヒットマンとして数百人を殺した男の告白を撮った、ちょっと薄気味悪いドキュメンタリーから見ていますが、彼にはカメラを向けた相手から信頼を勝ち取る独特の才能があるように思います。ちなみに、"海の火"というのは、映画の中のラジオでも流れるイタリアの歌謡曲の題名です。

 写真はベルリナーレ・パラスト前のスクリーンに、フォトコール中のジャンフランコ・ロージとサミュエル少年が映し出されたところです。

(齋藤敦子)