シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(6)逃げる詩人、追う刑事/パブロ・ララインの新作「ネルーダ」

2016/05/20

2016_06_01cannes_photo.jpg パブロ・ララインの映画を初めて見たのは2010年のヴェネツィア映画祭で、作品は『検死』。アジェンデ政権がクーデタで倒れた時期を舞台に、死体を検視する医師の目から軍の弾圧を描いた映画でした。続いて、ピノチェトの独裁制を倒すことになる国民投票のキャンペーンを米国仕込みの宣伝戦略で可能にしてしまう宣伝マンを主人公にした『NO』は2012年の監督週間で上映され、このときはスペイン語圏の友人たちのほぼ全員から見るように薦められたのでした。そして昨年ベルリン映画祭で銀熊賞を獲った『クラブ』は、聖職者の犯罪をテーマにしたブラックユーモアたっぶりの作品で、昨年のベルリンで私が最も好きだった1本。ということで、今年の監督週間で上映されるララインの最新作『ネルーダ』を見るのがとても楽しみでした。

 パブロ・ネルーダはノーベル文学賞を受賞したチリの国民的詩人で政治家。映画は1948年、ビデラ政権によって共産党が非合法化され、共産党員で上院議員のネルーダにも逮捕命令が出て、警察に追われながら、やっとのことで国外逃亡を果たすまでを描いています。面白いのはネルーダと彼を逮捕しようとする刑事を対比しながら交互に描いているうちに、ネルーダの詩を媒介にして、追われる者と追う者が次第に共鳴していくところ。ネルーダの国外逃亡は史実ですし、彼を追う刑事も実在の人物だそうですが、ララインは現実にとらわれず、まるで詩のような映画にしていました。

 写真は13日に行われた上映前の舞台挨拶の模様で、左からパブロ・ラライン監督、ネルーダ役のルイス・ネコ、ネルーダの妻役のメルセデス・モラン。刑事役のガエル・ガルシア・ベルナルで、ベルナルは『NO』に続く主演です。

(齋藤敦子)