シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(10)社会派の面目躍如/ケン・ローチ監督の「ダニエル・ブレイク」にパルム・ドール

2016/05/24

2016_10_01cannes_photo.jpg 5月22日夜、主会場リュミエールでコンペ部門の授賞式が行われました(結果はこの欄の最後をご覧ください)。プレスの評価の審査員の評価が食い違うのは当然のことですが、その差が今年ほど大きかった年はないように思いました。

 2度目のパルム・ドールを手にした『ダニエル・ブレイク』は、福祉行政の理不尽さを告発する社会派ローチの面目躍如の作品。昨年の『ディーパンの闘い』の移民というテーマ同様、社会的なテーマ性を持った作品がパルムを獲るという最近の傾向を示すものだと思います。

 グランプリの「まさに世界の終わり」は、不治の病に罹った主人公が、長年疎遠だった家族に別れを告げにいくという物語を、ガスパール・ウリエル、ナタリー・バイ、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥというフランスのオールスター・キャストで描いたもの。デビュー以来、世界の注目を集めてきた期待の星のドランですが、いがみ合う家族というテーマも新鮮味がなく、演出も単調で、私はあまり感心しませんでした。

 監督賞をムンジウとアサヤスの2人に、ファルハディの『セールスマン』に2つの賞を出すという変則的な結果は、審査員の中でかなり意見が分かれた結果だと思います。

 コンペの中で私が好きだったのはジム・ジャームッシュの『パタースン』、ポール・バーホーベンがイザベル・ユペール主演でフランスで撮った『彼女』、相変わらずキッチュな映像で魅せるニコラス・ウィンディング・レフンの『ネオン・デーモン』、ギロディ的世界が炸裂するアラン・ギロディの『まっすぐ立つこと』でしたが、どの作品も見事に賞に絡みませんでした。こんな年もあるものです。

 写真は見事2度目のパルムを手にしたケン・ローチ監督、右はプロデューサーのレベッカ・オブライエンさんです。

【受賞結果】
●コンペティション部門
パルム・ドール:「ダニエル・ブレイク」監督ケン・ローチ(イギリス)
グランプリ:「まさに世界の終わり」監督グザヴィエ・ドラン(カナダ)
監督賞:クリスティアン・ムンジウ「バカロレア」(ルーマニア)
    オリヴィエ・アサヤス「パーソナル・ショッパー」(フランス)
脚本賞:アスガー・ファルハディ「セールスマン」監督アスガー・ファルハディ(イラン)
審査員賞:「アメリカン・ハニー」監督アンドレア・アーノルド(イギリス)
女優賞:ジャクリン・ホセ「マ・ローサ」監督ブリヤンテ・メンドーサ(フィリピン)
男優賞:シャハブ・ホセイニ「セールスマン」監督アスガー・ファルハディ(イラン)

●短編コンペティション部門
パルム・ドール:「タイムコード」監督フアンホ・ヒメネス(スペイン)
次点:「悪魔と踊った娘」監督パウロ・ミランダ・マリア(ブラジル)

●カメラ・ドール(新人監督賞)
「女神たち」監督ウッダ・ベンヤミナ(監督週間部門)

●シネフォンダシオン
1席:「アンナ」監督オル・シナイ(イスラエル)
2席:「イン・ザ・ヒルズ」監督ハミッド・アフマディ(イラン)
3席:「舐める音」監督ナジャ・アンドラセフ(ハンガリー)
   「罪、おそらく」監督マイケル・ラバルカ(ベネズエラ)
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●FIPRESCI賞
コンペ部門:「トニ・エルドマン」マーレン・アデ(ドイツ)
ある視点部門:「犬たち」ボグダン・ミリカ(ルーマニア)
監督週間&批評家週間の初監督作に対して:「大変」ジュリア・ドゥクルノー(フランス/ベルギー)

●エキュメニック賞
「ただの世界の終わり」グザヴィエ・ドラン(カナダ)
次点「アメリカン・ハニー」アンドレア・アーノルド(イギリス)
  「ダニエル・ブレイク」ケン・ローチ(イギリス)

(齋藤敦子)