シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3完)グランプリに「ブルーム・オブ・イエスタデイ」/ホロコーストの記憶がテーマのロマンチック・コメディ

2016/11/06

tokyoimage01.jpg 11月3日に六本木のEXシアターで授賞式が行われ、以下のような賞が発表になりました。今年の審査員長はフランスのジャン=ジャック・ベネックス監督、以下、メイベル・チャン(プロデューサー)、ヴァレリオ・マスタンドレア(俳優)、ニコール・ロックシン(プロデューサー)、日本の平山秀幸監督の5人。グランプリは、「4分間のピアニスト」が日本公開されているクリス・クラウス監督が、今に残るホロコーストの記憶をテーマに、ドイツ人のホロコースト研究家とユダヤ系フランス人女性とのロマンチック・コメディ風に描いたもの。特別賞の「サーミ・ブラッド」は、スウェーデンの少数民族サーミ族の少女を主人公に、1930年代に行われた同化政策の暗部を描いたものだそうですが、残念ながら、今年は例年以上に仕事が重なって、コンペ部門の作品はほとんど見られませんでした。

tokyoimage02.jpg アジアの未来部門は、石坂健治プログラム・ディレクターのインタビューにある通り、プチョン・ファンタスティック映画祭のディレクターのチョ・ヨンベ、トロント映画祭プログラマーのジョヴァンナ・フルヴィ、橋口亮輔監督の3名が審査し、ミカイル・レッド監督の「バードショット」に作品賞を授与しました。

 ミカイル・レッドは91年生まれの25歳で、これが2作目。デビュー作の「レコーダー 目撃者」も3年前の東京映画祭で上映されています。「バードショット」は、絶滅危惧種のワシを誤って撃ち殺した娘を主人公に、過去に何かありそうな娘の父親、バスの乗客が全員行方不明になった事件を捜査する若い警官などを絡めて描いたミステリー。一見、西部劇風ですが、警察の腐敗などフィリピンの社会問題が盛り込まれていて、今年のアジアの未来の中で唯一見応えのある作品でした。
2016tokyo_cinema_p_03_03.jpg 「ブルカの中の口紅」は女性の自立をテーマに、インドの小都市に住むざまざまな年齢の女性たちの葛藤を描いたもの。女性監督のシュリーワースタウはインドの映画産業の中心地ムンバイ生まれだけあって、達者にまとめたという印象。
 石坂ディレクター推薦の内モンゴルのチャン・ダーレイ監督の「八月」は、父親が映画撮影所に勤める12歳の少年の夏休みを描いたモノクロの作品。見ていると、侯孝賢の「冬冬の夏休み」やエドワード・ヤンの「ヤンヤン 夏の想い出」といった"子供の夏休みもの"の秀作を次々連想してしまい、となると、登場人物を見つめる視線の浅さが気になってくるし、モノクロの映像もただ美しいだけに終わっていたのが残念です。

写真(上)は東京グランプリのクリス・クラウス監督。後列右端が審査員長のジャン=ジャック・ベネックス。(c)TIFFANY2016
写真(中)は今年の審査員と受賞者。(c)TIFFANY2016
写真(下)は今年の会場風景。TOHOシネマズ六本木の入口。


【受賞作品】
東京グランプリ/東京都知事賞
「ブルーム・オブ・イエスタデイ」監督クリス・クラウス
審査員特別賞:「サーミ・ブラッド」監督アマンダ・ケンネル
監督賞:ハナ・ユシッチ「私に構わないで」
女優賞:レーネ=セシリア・スパルロク「サーミ・ブラッド」
男優賞:パオロ・バレステロス「ダイ・ビューティフル」監督ジュン・ロブレス・ラナ
芸術貢献賞:「ミスター・ノー・プロブレム」監督メイ・フォン
観客賞:「ダイ・ビューティフル」

アジアの未来部門
作品賞:「バードショット」監督ミカイル・レッド
国際交流基金アジアセンター特別賞:
アランクリター・シュリーワースタウ「ブルカの中の口紅」

日本映画スプラッシュ賞:「プールサイドマン」監督 渡辺紘文

WOWOW賞:「ブルーム・オブ・イエスタデイ」

(齋藤敦子)