シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(1)アートに逆風 中国/市山尚三プログラム・ディレクターに聞く

2016/11/19

2016tokyo_filmex_p_01_01.jpg 第17回東京フィルメックスが有楽町の朝日ホールで11月19日から開催されます。今年も 市山尚三プログラム・ディレクターに今回の見どころやアジア映画全般のお話をうかがってきました。


 -去年のフィルメックスは2本の中国映画が受賞しましたが。

 市山:今年も中国映画は2本入っています。1本はベルリンのフォーラム、1本はプサンに入っていて、そういう意味では中国映画は相変わらずレベルは高いと思いますね。ただ、多くはないです。去年も言ったかもしれないですが、商業映画を作るのは簡単だけど、アート映画を作るのはすごく難しい。政府の助成金というものがないんで、商売としてお金を集めなきゃいけない。そうすると、さすがに中国も最近は様子が分かってきて、商売にならないものにお金を出してもしょうがない、となる。それに、中国ですら公開できないものが結構多いんです。 それは検閲の問題とは関係なく、シネコンが上映してくれない。 日本みたいにアートシアターがほとんどないんで、大変厳しい状況になっている。アート映画を作って、結果、当たりませんでした、ならいいんだけど、端から公開もできないんじゃないか、というものに誰もお金を出さなくなっているんです。

 -前に行かれていた、北京のインディペンデント映画祭は全然やらなくなったんですか?
 
 市山:そういえばここ2年、聞かないですね。やってないかもしれないです。あれはビジネスとは関係ない世界ではあったんですけど。ただ、地方ではインディペンデント映画祭をやっています。北京は、ある時期から突然取り締まりが厳しくなったんですが、たとえば南京とか、杭州とか、そういったところのインディペンデント映画祭はやってるはずです。僕が2年前に行った西寧の映画祭もちゃんと開催されてて、なかなか映画館に掛かりそうもない、インディペンデント系の映画をやっています。そういう映画祭は地方に多いです。

 -どこからお金を持ってくるんですか?
 
 市山:地方の公共団体とか、あるいは地方の企業とかで、意外にちゃんとお金があったりする。皆が手弁当でやっているという感じではないです。少なくとも西寧は、やっている映画はインディペンデントだし、明らかに許可をとってないものも上映している。見ていて、「これ大丈夫?」と言うと、「まだ許可とってない」とか、そういう映画も上映しているんだけど、ちゃんと市民ホールみたいなところでオープニングセレモニーをやっています。

 -出資者が企業だったら見返りを求めそうな気がしますが。

 市山:ポスターとかカタログとかに広告を出しています。どの程度広告として意味があるのかは分かりませんけど、それ以上はそんなに求めていない。2年前に行ったときの話ですが、審査員長がチアン・ウェンで、審査員にチャン・チェンが来たりして、えらく豪華メンバーなんだけど、若手の作ったインディーズの短編映画を見て賞を出している(笑)

●若手育成に協力
 -賞をもらった人はすごく嬉しいでしょうね。

 市山:スターから賞をもらうわけですから。最初カタログを見たときは、どうせチアン・ウェンとかは顔見せで、セレモニーだけだろうと思ったら、ちゃんと全期間いる。

 -映画人にインディーズを応援しようという気分があるんでしょうか?

 市山:商業映画をやっている人がインディーズ映画の審査員をやったりとか、映画人の中には若手を育てなきゃいけないみたいな気持ちはすごく大きいと思います。今、どこまで進行しているか分からないですが、ジャ・ジャンクーがMK2と協力して、中国でもアート映画のチェーンを作るというのをやっているんです。

 -MK2がフランスでやっているような、アート系のチェーンですか?

 市山:MK2がどの程度協力的か分からないですが、公式にはMK2と提携して、中国にアート系のチェーンを作ろうということです。


 -今回コンペで上映される『よみがえりの樹』というのがジャ・ジャンクーのプロデュース作品ですね。

 市山:過去にも『記憶が私を見る』など、5,6本プロデュースをやっていますけど、作っても劇場に掛けるのに困るらしいんですよ。それで香港のブロードウェイという映画館のチェーンが北京に2館だけアートシアターみたいなのを作ってて、今、北京で恒常的にアートシアター系の映画を上映しているのはそこくらいしかないんです。

●外国映画の配給にクォーター制
 -そごが中国初のインディーズのチェーン?

 市山:初めてかどうかは分かりませんが、ワン・シャオシュアイやロウ・イエの映画とかはそこでしかやってない。シネコンに掛からないので。


 -お客さんは来るんですか?
 市山:厳しいと言ってました。カフェや本屋があったりする、日本のアートシアターを意識した感じのおしゃれな映画館で、ちょっとイベントスペースみたいなのがあって、監督を呼んでトークとかそういうのもやったりしてるんですけど、作品が続かないと言ってましたね。中国の場合、可哀想なのは、外国映画の配給にクォーター制度があって、本数が年間で決められていて、ほとんどハリウッド映画に占められてしまい、ヨーロッパのアート映画が配給されないんです。

 -MK2と提携したら、MK2配給の映画が上映できる、ということではないんですか?

 市山:このところ毎年毎年"数年後に"と言われて、なかなか実現しないんですが、"数年後にクォーター制度が撤廃される"という説があるんで、もしかしたらMK2もその辺を狙って、あわよくばと思っているかもしれないです。ハリウッドからの自由化の圧力が強いんで、数年後には撤廃されるとは言われています。

 -でもまだ撤廃されていない。

 市山:今のところは、ほとんどの配給本数がハリウッド映画に占められていて、そこに入り込む余地がない。そうするとアートシアターを建設しても、やるものが中国のインディペンデント映画しかないんです。

 -それは厳しいですね。

 市山:もともと見に行く需要のないところでやっているから、番組編成が厳しいという話は聞きました。

 -若い観客がインディペンデントの中国映画に関心を持って見に行くという感じではない?

 市山:関心持ってないんじゃないですかね。

 -昔の日本のミニシアターのブームみたいになるといいけど。

 市山:そうなんです。クォーター制度が撤廃されて、ヨーロッパのアート映画がどんと入ってきて、物珍しさもあって大当たりする、というようになれば。

●昔に戻ったプサン映画祭
 -続いて韓国ですが、プサン映画祭は行かれました?

 市山:行きました。派手な韓流スターが来なくなった分だけ昔に戻った、というと変なんですが、初期の精神に戻った感じがちょっとありましたね。外国映画はそのまま普通にやってるし、海外から来てるゲストたちというのは相変わらず来てるんで、いろんな人には会えるし、表面的にはほとんど変わった感じはないです。
 キム・ドンホさんが実行委員長に就任して、映画祭としては独立してやっているという感じにはなったんだけど、ただ決着はついてないんですよ。市長が謝罪したわけでもないし、そこがすごく不明瞭になっていて、何人か振りあげた拳を下ろしそこねた人たちがいる。今年の2月か3月くらい、ちょうどベルリンの後くらいに、いろんな業界団体がこのままでは映画祭に不参加だという時期があって、4月に市長が実行委員長を降りて、"キム・ドンホさんが実行委員長になります、映画祭は正常に開催されます"ということが発表されたんだけど、別に市長はそれまでのことを謝罪したわけでもないし、その辺がまったく不明瞭なまま再スタートしてしまったんで、結局、業界団体の人たちも自主参加みたいな形になって、人によっては参加してるし、人によっては、いやまだ俺は不参加だ、と。

 -キム・ドンホさんと言えば、まだプサンを立ち上げる前に、ナントによく来ていたのを思い出すんですが、プサンもあっという間に大きくなったのに、あんなことが起こり、まだ韓国は政治的に揺れているので、この先どうなるか分からないですね。

 市山:朴槿恵政権がひっくり返るのは目に見えているんで、逆に言うと、映画祭が期待している部分もあると思う。さすがにここまでひどいことはないだろうと。

 -プサン市長は朴政権寄りの人でしたよね。

 市山:そうです。大統領が李明博から朴槿恵になってからというもの、映画界が大荒れで、いろんな助成金カットだとか、要するに、それまでの助成金は共産主義的であると、商業映画から徴収した映画税を若手とかに支援するというのは共産主義的なやり方だからやめろというような、そういう暗黒の時代がしばらく続いていたのが、これでひょっとしたらちょっといい方になるかなと。KAFA(韓国国立映画アカデミー)とかも毎年の予算を削減されて大変だったんで、なんとなく、みんな期待している風はありました。

 -まだ分かりませんよ、世界全体が嫌な風潮なので。

 市山:この『恋物語』がKAFAの製作なんです。レズビアンの映画なんで、別に国立映画大学だから国の意向を受けてということはないと思うんですけど、堂々とこういう作品を終了制作として作っているというところは、ある意味すばらしいな、と。映画のレベルも高いというか、普通の大学の修了制作のレベルを遙かに超えてる感じがあるんで、そこもなかなか。体制さえ整えば韓国はまた持ち上がってくるだろうという感じですね。

●若手が出ない韓国

 -韓国はもう1本、『私たち』という作品がありますね。

 市山:これはベルリンのジェネレーションに出ていた映画で、ある種、児童映画なんですが、子供の演出が素晴らしい。結果的に2本とも女性の新人監督になりました。
 韓国も、今、ものすごい作家が出てきているかというと疑問ではあるんです。前の世代のパク・チャヌクとかキム・ギドクとか、あの世代が強すぎて、それを突破する若手がなかなか出てきてない。日本と若干似た感じというか。

 -フィリピンも、TIFFの<アジアの未来>で受賞した『バードショット』は面白かったけど、上にはラヴ・ディアス、メンドーサという二大巨匠がいますから。

 市山:フィリピンは1本あります。シネマラヤ映画祭というインディペンデント映画祭で受賞した『普通の家族』という作品で、これも手持ちカメラで撮ってるんで、メンドーサ的な感じではあるんですけど、これもなかなかたいしたものだと思います。この人の映画は3本目だと思うんですけど、毎回見ててもうひとつだなと思ってたんですが、今度のは大きく脱皮した感じがあります。

 -『神水の中のナイフ』というのは『タルロ』のプロデューサーの監督デビュー作なんですね。

 市山:ペマ・ツェテンとイー・トンシンがプロデューサーなんです。ペマ・ツェテンは『タルロ』でプロデューサーをやってもらったから分かるんですけど、なぜイー・トンシンがプロデューサーなのかは謎なんです。

 -これもチベットの?

 市山:これは回族の映画で、寧夏回族自治区というところ。イスラム圏なのでチベットではないです。

●ミディ・ジー監督の「マンダレーへの道」

 -ペマ・ツェテンは<アジアの未来>の『八月』という内モンゴルの映画もプロデュースしていて、あちこちに進出してますね。

 市山:辺境で映画を撮る人たちがみんな頼りにしてる(笑)。監督本人が回族かどうかはまだちょっと分かりません。1回プサンで会ったんですが、何系かは聞かなかったんです。名前は中国風ですが、回族の人たちは名前を中国風にしてる人が多いんで。どうも、もともとこの原作を監督したくて、いろいろやってもお金が全然集まらなくて、そのうちにペマ・ツェテンのプロデューサーをやるようになって、というようなところから出来てきた映画です。

 -このミャンマーの『マンダレーへの道』というのは?

 市山:暉峻さん(暉峻創三、大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター)が大阪アジアンで紹介したミディ・ジーという監督の映画なんですけど、この人はミャンマー華僑なんです。ミャンマー人なんだけど中国人で、中国系の名前を持っていて、今、基本的には台湾に住んでいる。見た目も完全に中国人で、教育も台湾の映画大学で受けて、台湾のプロデューサーと知り合って、でも、映画は全部ミャンマーで撮っている。『マンダレーへの道』もミャンマーからタイに移民した男女のラブストーリーです。

 -スリランカの『バーニング・バード』は?

 市山:これは以前フィルメックスでやった『フライング・フィッシュ』の監督で、スリランカの内戦の話です。内戦中にお父さんが密告で殺されてしまって、子供を抱えた母親が酷い目にどんどん遭っていくという。

 -スリランカの内戦は本当に後を引きますね。

 市山:監督本人の少年時代が内戦のまっただ中だったんで、1作2作とも内戦の話を映画にしています。

●政府の関与強まる?イスラエル
 -今年は<イスラエルの現在>という特集があって、コンペに『オリーブの山』というイスラエル映画があって、イスラエルが3本ということですね。

 市山:本当はもっと余裕があれば、いろんなものが見せられたんですが、特集といいながら結局2本で、コンペの映画入れても3本しかないというのがあるんですけど。ここ最近、たしかに国際映画祭でイスラエル映画多いんで、しかも、ギタイみたいな大作感のあるものではなく、むしろ小さい話なんだけど、社会問題や政治問題に突っ込んだものが増えているという感じがする。

 -<アジアの未来>にも1本イスラエル映画がありましたが、イスラエルは今、ルネッサンスみたいな感じになっているんでしょうか。

 市山:若手の助成金とか、映画大学とかがあったりするんで、どんどんいろんな人が出てきているのは間違いないですね。ただ、今年、記事を読むと、今までノーコントロールだったのが、政府がいろいろと言ってきそうだみたいな、不穏な感じになってるということは書かれていました。

 -政治的な問題があるから、この勢いがどっちに転ぶか分からないですね。

 市山:今まで見てると、本当によくこんなものに国がお金を出したなというような、明らかにシオニズムの引き起こした問題、今回の『山のかなたに』もそうですけど、よくこれで政府の団体がお金を出すよねと感心することが多いんですけど、最近やっぱりうるさくなってきたようです。

 -外国に出るイスラエル映画って、リベラルな監督たちのものが多いから、イスラエルの現実を、うまくオブラートにくるみつつも、批判的に描いているじゃないですか。 でも、彼らがその後、昔のメナハム・ゴーランのように、大きな商業映画に進出していく、みたいな感じにはならないですよね。

 市山:産業的に、こういう人たちがその後娯楽映画を撮ったりという風にはなってないですね。

 -アート系のまま?

 市山:アート系でずっとやっていくんじゃないですか。

 -そうすると、助成とか必要ですよね。

 市山:そうです。その点、今の助成金がないと行き詰まりますね。

 -イスラエル政府が口出ししてきたりすると、今の風潮は長く続かないかもしれないですね。

 市山:ちょくちょくそういうことを言う政治家が出てくる感じです。

●人間味が魅力「タイペイ・ストーリー」
 -今年のクラシック特集ですが。

 市山:今年はデジタル・リマスター版がたまたま沢山集まったんで、別に特集しようと思って特集したわけじゃないんです(笑)

 -バラエティに富んでますね。エドワード・ヤンはTIFFで『グーリンチェ』をやって、フィルメックスで『タイペイ・ストーリー』をやる。

 市山:これはボローニャの修復した映画を集めてやっている映画祭でプレミア上映されたものです。

 -侯さんが若くてびっくりです。

 市山:この辺のエドワード・ヤンは人間像が一番ナチュラルな感じ。彼の映画は、いい意味でも悪い意味でも人間像が作ったような感じがするけど、この映画はすごくリアルな感じのする人間達が出ている映画なんで、個人的にはすごく好きな映画なんです。

 -エドワード・ヤンは頭のいい人だから、作ってしまう。

 市山:それはそれで面白いんですが、この映画の場合、侯孝賢が出ているせいかもしれないけど、一番人間味がある。

 -侯さんが出たらそうならざるをえない(笑)。あと、キン・フーが2本。

 市山:これはたまたま松竹が配給権を買ったんで、『侠女』は数年前にカンヌ映画祭で上映されたもので最新のデジタルリマスターではなく、数年前なんですが。

 -『竜門の宿』をやるんなら、蔡明亮の『楽日』もやればいいのに。

 市山:あれは去年の蔡明亮特集でやったので。

●幻の「ザーヤンデルードの夜」
 -マフマルバフの『ザーヤンデルードの夜』はまったく知らない作品なんですが。

 市山:これは90年の作品で、すごく前でもないんですが、ネガが没収されて本当に幻の映画だったんです。ファジル映画祭で上映して、その時点で禁止になって、外国での上映もできませんというんで、ネガを没収されてたらしいんです。

 -それが出てきたんですか? さすがイラン、魔法のように出てきますね。

 市山:マフマルバフは"詳細は言えないが"と。

 -言ったら迷惑の掛かる人がいる?

 市山:結構いると思うんです。で、ネガが持ち出されて、今ロンドンに住んでいるんで、ロンドンで修復作業をやって。残念ながら一部音声がなかったりとか、欠けてる部分があるし、完全版にはほど遠いらしんですけど、ストーリーはちゃんとつながって見れるんで。

 -マフマルバフは今ロンドンですか。本当にノマドのようになっちゃいましたね。

 市山:パリにしばらくいて、今はロンドンです。

 -映画が撮れるところに行く、みたいな感じなんですか?

 市山:本当かどうか、本人が言ってるんですが、パリにいたら秘密警察につきまとわれたんで、危ないと思ってロンドンに行ったということでした。

 -パリでつきまとわれて、ロンドンでつきまとわれないという理屈もよく分からないですけど。

 市山:まあ、ロンドンは英語が通じるし、住みやすいと思いますね。

 -あと加藤泰さんの『ざ・鬼太鼓座』があって、特別招待作品が5本。

 市山:今年は去年の蔡明亮特集のような大きな特集が出来なかったんで、本数的には少ないんです。

 -そういえばそうですね。同じ日数?

 市山:日数的には同じなんだけど、去年の蔡明亮特集は終わってからもやってたし、エテックスの特集もアンスティテュ・フランセでリピートをしましたから。今回はそういう点で、期間中に純粋に終わるんで。

 -予算的にも同じ?

 市山:特集上映をやるには別予算というか、去年のように台湾文化センターが出してくれるとか、アンスティテュ・フランセが出してくれるとか、そういうことがない限りは、会場を広げるのがまず難しいですし。

 -去年から1年、いろんな映画祭に行かれて、映画を見て回られて、変わったこととか、突出してよくなっているところとか、ありました?

 市山:それはなかったですね。国によって面白かった映画はあったりするんですけど、特別新しいものが起こってるということはなかったです。

 -ニューウェーヴみたいなものはない?

 市山:今回はミャンマー映画といっていいかわからないけど、ミディ・ジーの映画をやるんですが、東南アジアからは、ぽつぽつといろんなところから出てきている感じはあります。タレンツ・トーキョーの応募者を見てみると、毎回毎回東南アジアの今までやってなかったところが増えていたりする。ここ数年ミャンマーから応募者が来たり、カンボジアから来たりとかしてきてるんで、そういうところから数年後くらいに、どんどん出てくるんじゃないかなという気はします。可能性はあると思うんです。
 カンボジアはリッティー・パンが映画センターを作って、そこで映画教育とか始めてから、突然応募者が増えてきたりしているし、ミャンマーは今、いろんな企業が進出しようとしていて若干経済発展の途上みたいな感じがあるんで、もしかしたらそこに才能ある人が出てくるかもしれない。そういうきざしは感じるんですけど、具体的に凄い人が出てきたということにはまだ至っていないですね。

 -これから?

 市山:でしょうね。全体的に言うと、さっきのフィリピンの話じゃないんですけど、フィリピン映画って今新しいんで、いろんな映画祭でやってるけど、結局ラヴ・ディアスとメンドーサの二大巨頭がいて、なかなかそれを突破する人が出てきてない。あの二人は今撮り始めたわけじゃないですから。海外は最近発見したかもしれないけど。

 -アジア的にはラヴ・ディアスとメンドーサはすでに巨匠ですから。

 市山:それに続く人たちというのが意外に出てきてないような気がするんです。


 写真は市山尚三プログラム・ディレクター(11月7日、赤坂の東京フィルメックス事務局にて)

(齋藤敦子)